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電子取引データの保存方法 — メールのPDF・Web明細の保存義務、検索要件が不要な場合と猶予措置

最終更新: 2026/10/24 / 執筆: ISZ GROUP(ISZ™ 仕訳AI 開発チーム)
この記事のポイント

電子帳簿保存法のうち、すべての法人・個人事業者が対応しなければならないのが電子取引データの保存です(法第7条)。スキャナ保存や電子帳簿の保存は「選べる」制度ですが、電子取引は取引の形がデータである以上、保存の方法も決まっています。この記事では、施行規則第4条と国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)にもとづいて、何を・どう保存すればよいかを、小さな会社でもできる方法から整理します。

電子取引とは — 保存しなければならないものの範囲

電子取引は「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」です(法第2条第5号)。取引情報とは、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに通常書かれる事項(日付・取引先・金額など)をいいます。保存の範囲は紙で受け取った場合と同じで、売上・仕入だけでなく、水道光熱費や旅費交通費などの経費の書類も含みます(一問一答 問2)。

取引の形保存するもの
メールに添付された請求書・領収書のPDF添付ファイル(本文に取引内容が書かれていればメール本文も)
Webサイト・ECサイトの領収書ダウンロードしたPDF、または画面のスクリーンショット
クラウドの請求書サービス・電子契約サービス受け取った(共有された)請求書・契約書のデータ
クレジットカード・交通系IC・スマホ決済の利用明細データ利用明細のデータ(個々の領収書データを別に受け取っていれば、それも)
EDI取引やり取りしたデータ(内容が変わらない合理的な方法で変換したものでも可。手で転記したものは不可。問40)
ペーパーレスFAX(複合機で受信してデータで保存)受信したデータ
DVDなどの記録媒体で受け取った請求書データそのデータ
メールやクラウドで交付した労働条件通知書・雇用契約書そのデータ(問3)

次のものは保存しなくてかまいません。

  • 取引情報が書かれていないメール(日程調整などのやり取り)。添付ファイルで請求書を受け取ったなら、添付ファイルだけ保存すれば足ります(問6)
  • e-Tax のダイレクト納付などでメッセージボックスに届く受信通知(問9)
  • 同じ内容の書面も受け取り、書面を正本とすると社内で決めている場合のデータ。ただし、データの方に書面を補う情報(メール本文の明細など)があれば両方保存します(問16)

Webで確認できる領収書は、サイトで確認できるようになった時点で受け取ったものとされ、ダウンロードしなければ義務がないわけではありません(問44)。ECサイト上でいつでも確認でき、サイト側が真実性と検索の要件を満たしている場合は、ダウンロードしなくてもよいとされています。保存期間が終わる前にサイトで見られなくなる場合は、その前にダウンロードします(問45)。

誰に義務があるか — 消費税との関係

電子帳簿保存法の電子取引データの保存義務を負うのは、所得税(源泉徴収の所得税を除く)と法人税の保存義務者、つまりすべての法人と、事業・不動産・山林所得などのある個人です。

消費税の仕入税額控除のために保存する電子インボイスは、消費税法上は、整然とした形式・明瞭な状態で出力した書面の保存でも仕入税額控除を受けられます(問5ト・問98)。ただし、同じデータは法人税の保存義務の対象でもあるため、法人は結局データの保存が必要です。「消費税のために紙で残しているから大丈夫」とはなりません。インボイスの記載事項はインボイス制度の解説を参照してください。

保存の要件 — 改ざん防止・見読性・検索

電子取引データは、次の要件を満たして保存します(規則第4条第1項)。

要件内容
改ざん防止の措置次の4つのいずれか(下で詳しく説明)
見読性パソコン・ディスプレイ・プリンタとその操作説明書を備え付け、画面と書面に整然とした形式・明瞭な状態で速やかに出力できる
検索機能取引年月日・取引金額・取引先で検索でき、日付・金額は範囲指定、2項目以上の組合せで検索できる(緩和あり)
システム概要書自社開発のプログラムを使う場合だけ、システムの概要を記載した書類を備え付ける

改ざん防止の4つの方法

  1. タイムスタンプが付いたデータを受け取る(発行側が付けている場合)
  2. 受け取った側がタイムスタンプを付す:速やか(おおむね7営業日以内)に。事務処理規程で業務処理の期間を定めていれば、その期間(最長2か月)を経過した後おおむね7営業日以内
  3. 訂正・削除の履歴が残るシステム、または訂正・削除ができないシステムで受け取り・保存する(クラウドの請求書サービスなど)
  4. 「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を定め、そのとおり運用し、備え付ける

専用システムのない小さな会社では、4の事務処理規程を使うのが一般的です。国税庁が法人用・個人事業者用のひな形を公表しています。規程には、訂正・削除を原則禁止とすること、やむを得ず訂正・削除するときの申請と承認の手続、その記録の保存、責任者を書きます。データの種類によって方法を混在させてもかまいません(問32)。

メールで受け取ったPDFやダウンロードしたPDFは、一般に受け取った側で訂正・削除ができるので、受け取ったデータにタイムスタンプがなければ、2のタイムスタンプか4の規程が必要です。添付ファイルをメールソフト上で見られるだけの状態では、検索できる状態とはいえません(問5イ)。

見読性 — スマホだけで取引している場合

パソコンやプリンタを持っていなくても、スマホやクラウドに保存したデータに通し番号を付け、表計算アプリで索引簿を作り、事務処理規程を定めれば対応できます。プリンタは、税務調査の際に近くの有料プリンタなどで速やかに出力できれば備え付けているものとして扱われます(問21)。

検索要件と、不要になる場合

検索の原則は次の3つです。

  1. 取引年月日その他の日付・取引金額・取引先で検索できる
  2. 日付・金額は範囲を指定して検索できる
  3. 2つ以上の項目を組み合わせて検索できる

税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、2と3は不要です。さらに、ダウンロードの求めに応じられることに加えて、次のどちらかに当たれば検索要件はすべて不要になります(規則第4条第1項柱書)。

検索要件がすべて不要になる場合ポイント
判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下法人は前々事業年度、個人は前々年の売上高。令和5年度改正前は1,000万円以下だった
出力した書面を、取引年月日その他の日付と取引先ごとに整理して提示・提出できる課税期間ごとに「日付順→取引先ごと」または「取引先ごと→日付順」に整理(書類の種類ごとでも可)。日ごろから出力・整理しておく

売上高5,000万円の判定のしかた

判定は消費税の基準期間の考え方にならいますが、使うのは「課税売上高」ではなく「売上高」です(問51)。

  • 税抜の金額で判定し、非課税売上(住宅家賃など)も含めます。免税事業者や簡易課税の事業者でも、非課税売上を含めて5,000万円を超えれば特例は使えません
  • 営業外収益や特別利益(一時的な資産の売却額、雑収入など)は含めません
  • 基準期間が1年でない法人は、売上高を基準期間の月数で割って12を掛けた金額で判定します
  • 基準期間がない新設法人の1期目・2期目は、検索要件が不要です
計算例1(基準期間が6か月の法人)前々事業年度が設立初年度で6か月、売上高(税抜)が2,800万円。
2,800万円 ÷ 6 × 12 = 5,600万円 → 5,000万円を超えるので、売上高による検索要件の免除は受けられません。
計算例2(非課税売上がある法人)前々事業年度の課税売上高(税抜)4,500万円、住宅の家賃(非課税)800万円、受取利息30万円(営業外収益)。
売上高 = 4,500万円 + 800万円 = 5,300万円(受取利息は含めない) → 5,000万円を超えるので、検索要件は必要です(ダウンロードの求めに応じれば範囲指定・組合せは不要)。

システムがない場合の検索の確保 — ファイル名と索引簿

専用のシステムがなくても、次のどちらかの方法で検索要件を満たせます(問50)。

  • ファイル名で管理する:ファイル名に「日付_取引先_金額」を統一した順序で入れ、特定のフォルダに集める。例:2026年10月15日付、株式会社サンプル商事からの55,000円の請求書 → 20261015_株式会社サンプル商事_55000.pdf。日付は西暦・和暦のどちらでもよいが、混在させない。取引先ごとのフォルダに「日付_金額」のファイル名で分けてもよい
  • 索引簿を作る:ファイル名を通し番号(1.pdf、2.pdf…)にして、表計算ソフトの一覧に通し番号・日付・金額・取引先・書類の種類を入力する。表計算ソフトの絞り込みで範囲指定と組合せができる

1つのPDFに複数の請求書が入っているときは、内容を変えずに取引ごとに分割し、それぞれにファイル名を付ける方法が認められています(問54)。メールソフトで検索できない場合は、メールをPDFなどに書き出して保存してもかまいません(問53)。

猶予措置(2024年1月から)

要件どおりの保存が間に合わない事業者のために、次の両方を満たせば、改ざん防止や検索などの要件にかかわらず、電子取引データをそのまま保存しておけばよいとされています(規則第4条第3項)。事前の申請や届出はいりません(問93)。

  1. 要件に従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認めること(システムや社内のワークフローの整備が間に合わない、人手不足、資金不足など)
  2. 税務調査などで、データのダウンロードの求めと、出力した書面の提示・提出の求めの両方に応じられること

次の点に注意します。

  • 猶予措置でもデータそのものの保存は必要です。2023年12月までの宥恕措置と違い、出力した書面だけの保存は認められません(問89)
  • システムが整っているのに、特段の事情なく要件どおりに保存していない場合は対象外です。すでに要件どおりに保存していた事業者が、システム更改や保存スペースの都合で要件を満たさなくなった場合も、原則として対象になりません(問95・問96)
  • 相当の理由がなくなった後に行う電子取引には使えません(問94)。調査で聞かれたら、対応状況と今後の見通しを具体的に説明できるようにしておきます

紙に印刷しての保存ができない理由

令和3年度の改正で、電子取引データを出力した書面での保存の措置は廃止されました。2024年1月1日以後の電子取引は、印刷した紙を保存しても、それだけでは保存義務を果たしたことになりません(問98)。

  • 社内の確認や回覧のために印刷すること自体は禁止されていません。データを要件どおりに保存したうえでの「控え」なら問題ありません
  • 印刷した紙をスキャナで読み取っても、スキャナ保存にはなりません(問99)
  • 要件を満たして保存していない場合は、青色申告の承認の取消しの対象になり得ます。ただし、取引が正しく記帳され、内容が他の資料から確認できるような場合に、直ちに取り消されたり経費が否認されたりするものではないとされています(問98 注)

保存期間と保存場所

保存期間は各税法の帳簿書類と同じで、法人は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年(青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年)です(問17)。保存場所は、紙で受け取った場合にその書類を保存すべき場所に準じますが、クラウドに保存し、その場所で画面に出力できれば認められます(問28)。バックアップは要件ではありませんが、保存期間を通じて残すために望まれます。

守らないとどうなるか

  • 電子取引データを保存していない、または要件を満たさず保存している場合、青色申告の承認の取消しの対象になり得ます(総合的に判断されます)
  • 電子取引データに関連して隠蔽・仮装があった場合、重加算税が10%加重されます(法第8条第5項)。消費税でも同様の加重があります(問64)
  • 令和7年度の税制改正で、デジタルインボイス(Peppol)や預貯金口座の決済データを、国税庁長官が定める基準に適合するシステムで送受信・保存し、帳簿に自動連携している場合は、この10%加重の対象から除く制度ができました。令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用され、あらかじめ届出が必要です(問65)

実務の保存方法 — 小さな会社の手順

専用システムを入れない場合の、いちばん手間の少ない組み立て方の例です。

  1. 電子で受け取っている書類を洗い出す:メール添付の請求書、ECサイト・Webサービスの領収書、カード・ETC・スマホ決済の明細、クラウドの請求書、ネットバンキングの振込データなど
  2. 事務処理規程を定める:国税庁のひな形を自社に合わせて直し、責任者を決めて備え付ける(改ざん防止の4の方法)
  3. 保存場所を1か所に決める:共有フォルダやクラウドストレージに「年度/月」または「年度/取引先」のフォルダを作る
  4. ファイル名の規則を決める:「日付_取引先_金額」。受け取ったらその都度、または月末にまとめて名前を付けて保存する
  5. 検索要件の要否を毎期確認する:前々期の売上高が5,000万円を超えたら、ファイル名か索引簿で範囲指定・組合せ検索ができる状態にする
  6. 仕訳と結び付ける:仕訳の摘要にファイル名や証憑の番号を入れておくと、調査や決算のときにすぐ原本をたどれます

件数が多い会社や、顧問先を多く抱える事務所では、訂正削除の履歴が残り、日付・金額・取引先で検索できるシステムに集約すると、規程の運用やファイル名付けの手間を減らせます。

よくある間違い

  • 「PDFを印刷してファイリングしているから大丈夫」:2024年以後の電子取引は、データの保存が必要です
  • 「メールの受信箱に残っているから保存している」:メールソフトで見られるだけでは検索できる状態とはいえず、改ざん防止の措置も必要です
  • 「課税売上高が5,000万円以下だから検索不要」:判定は非課税売上も含む「売上高」です
  • 「猶予措置があるから何もしなくてよい」:データの保存と、ダウンロード・出力書面の提示の両方に応じられる準備は必要です
  • 「ダウンロードしていないWeb領収書は対象外」:サイトで確認できるようになった時点で受け取ったものとされます
  • 「紙で届いた請求書も電子取引」:紙で受け取ったものは電子取引ではありません。電子化するならスキャナ保存の要件で行います

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ISZ™ 仕訳AI では

ISZ™ 仕訳AI は、メールで受け取った請求書のPDFや、スマホで撮った領収書を読み取り、仕訳の下書きを作る税理士事務所向けのサービスです。電子取引データの保存要件を満たすかどうかは、規程の運用を含めて事務所・顧問先ごとに確認してください。

  • 取引年月日・金額・取引先での検索と、訂正削除の履歴
  • 事務処理規程のひな形
  • 仕訳と原本を左右に並べて確認でき、証憑ID で会計ソフト側から原本を逆引きできます
  • インボイスの登録番号の抽出と、銀行明細(通帳)との自動照合

よくある質問

メールで届いたPDFの請求書は、印刷して保存すればよいですか?

2024年1月1日以後の電子取引は、PDFのまま、改ざん防止・見読性・検索の要件を満たして保存する必要があります。印刷した紙は社内の控えとしては使えますが、紙だけでは保存義務を果たしたことになりません。

電子取引の検索要件が不要になるのはどんな場合ですか?

税務職員のダウンロードの求めに応じられることを前提に、①基準期間(法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下、または②出力した書面を日付と取引先ごとに整理して提示・提出できる場合は、検索要件がすべて不要です。売上高は非課税売上を含めて判定します。

猶予措置を使うには届出が必要ですか?

不要です。要件どおりに保存できなかったことに相当の理由があり、税務調査でデータのダウンロードと出力書面の提示・提出の両方に応じられれば対象になります。データそのものは保存しておく必要があります。

小さな会社でもタイムスタンプが必要ですか?

必要ありません。改ざん防止は、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用・備付けする方法でも満たせます。国税庁がひな形を公表しています。

Amazonなどの通販サイトの領収書は、毎回ダウンロードしないといけませんか?

サイトで確認できるようになった時点で受け取ったものとされます。サイト上でいつでも確認でき、サイト側が真実性・検索の要件を満たしている場合はダウンロードしなくてもよいとされていますが、保存期間の終わりまで見られることが前提です。不安なときはダウンロードして保存しておくのが確実です。

電子取引データの保存期間は何年ですか?

法人は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年、青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年です。紙の書類と同じ期間です。

出典

更新履歴

  • 2026/10/24: 公開

この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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