2023年10月1日に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、仕入の消費税を控除するために、帳簿と、登録を受けた事業者が交付する適格請求書(インボイス)の保存が必要です。この記事では、経理の現場で毎日出てくる「登録番号は正しいか」「登録番号がない請求書はいくら控除できるか」「どう仕訳するか」を、計算例と仕訳例で説明します。制度は2026年10月24日時点のもので、計算例の数字は 経過措置の計算ツール・登録番号チェックツールと同じ計算で確かめています。
適格請求書(インボイス)の記載事項
適格請求書は、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけが交付できます。書式は自由で、請求書・納品書・領収書・レシートのどれでもかまいませんが、次の事項が必要です。
| 記載事項 | 適格請求書 | 適格簡易請求書(小売・飲食・タクシーなど) |
|---|---|---|
| 発行する事業者の氏名または名称と登録番号 | 必要 | 必要 |
| 取引年月日 | 必要 | 必要 |
| 取引の内容(軽減税率の対象ならその旨) | 必要 | 必要 |
| 税率ごとに分けて合計した対価の額(税抜または税込)と適用税率 | 必要 | 対価の額は必要。適用税率と消費税額等はどちらか一方でよい |
| 税率ごとに分けた消費税額等 | 必要 | |
| 交付を受ける事業者の氏名または名称(宛名) | 必要 | 不要 |
消費税額等の端数処理は、1枚の請求書につき税率ごとに1回です。たとえば税抜333円の品物(10%)を3つ売った場合、品目ごとに 33.3円 → 33円を3回足すのではなく、合計 999円 × 10% = 99.9円 → 99円(切捨ての場合)と計算します。この例では結果が同じですが、品目数が多いと差が出ます。計算例は 消費税の計算方法にあります。
登録番号(T番号)の形と確認方法
登録番号は、アルファベットの T に13桁の数字を付けた番号です。
- 法人: 「T+法人番号(13桁)」。法人番号は国税庁の法人番号公表サイトで公表されている番号と同じです。登記のある会社では、法人番号の後ろ12桁は登記の会社法人等番号です
- 個人事業者など(法人番号のない事業者): 「T+13桁の数字」。法人番号とは重ならない番号が新たに付けられます。マイナンバー(個人番号)は使いません
受け取った請求書の登録番号は、次の3段階で確認すると確実です。
- 形式: T のあとに数字がちょうど13桁あるか(全角数字・ハイフン・空白は取り除いて数える)
- チェックディジット: 法人なら、先頭の1桁が残り12桁から計算した数字と一致するか(下で説明)
- 登録の有無: 国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で番号を検索し、名称が請求書の発行元と一致するか、取引日に登録が有効か(登録日・取消・失効の日)を確かめる。件数が多い場合は公表サイトの Web-API で照会できます
法人番号のチェックディジットの計算方法
法人番号の先頭1桁は「検査用数字(チェックディジット)」で、残り12桁から次の式で決まります(法人番号の指定等に関する財務省令)。
| 右からの桁 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9〜12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 数字 | 2 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 2 | 1 | 0 |
| 重み | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | — |
| 積 | 2 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 2 | 2 | 0 |
積の合計 11 → 11 ÷ 9 の余り 2 → 9 − 2 = 7。先頭の数字 7 と一致するので、形式上は正しい番号です。
この番号を「T7000012080002」と読み違えた(5を8と読んだ)場合、合計は 14、余りは 5、9 − 5 = 4 となり、先頭の 7 と一致しません。スキャンや OCR の読み違い、手入力の打ち間違いはこうして見つけられます。
チェックディジットで見つけられない誤りもあります。後ろ12桁の「0」と「9」の取り違えは、合計を9で割った余りが変わらないため一致してしまいます。また、個人事業者の登録番号は法人番号ではないため、この検算が一致しなくても誤りとは限りません。最終的には公表サイトで確認してください。
登録番号がない・間違っている請求書を受け取ったら
発行元が実際には登録事業者なのに請求書に登録番号がない場合や、番号が誤っている場合、その請求書は適格請求書になりません。発行元に修正した適格請求書(または修正した事項を明示した書類)の交付を依頼するのが原則です。国税庁のQ&A(問113-2)では、登録番号の記載がない請求書について、発行元が登録事業者かどうかを確かめずに、一律に次の経過措置を適用することも認められています。
免税事業者などからの仕入:経過措置(80%→70%)
免税事業者、消費者、登録していない課税事業者からの仕入は、本来は仕入税額控除ができません。ただし制度の開始から一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。令和8年度税制改正で、2026年10月からの割合が当初予定の50%から70%に改められ、期間も2年延びました。
| 課税仕入れを行った日 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 〜2023年9月30日 | 100%(区分記載請求書等保存方式) |
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日〜 | 0%(控除できない) |
80%と70%のどちらになるか(2026年10月をまたぐ取引)
割合は課税仕入れを行った日で判定します。請求書の日付や支払日ではありません。
- 商品の仕入: 原則として引渡しを受けた日。9月21日〜30日に受け取った分は80%、10月1日以降に受け取った分は70%
- サービス(役務の提供): 原則として約束した役務の全部が完了した日。9月21日に始まり10月20日に完了した作業は、全体が70%
- 短期前払費用: 法人税の短期前払費用の取扱いを受けている場合は、支払った日の属する課税期間の割合(たとえば2026年1月に支払った1年分の保守料は80%)
1つの免税事業者等ごとの上限(1億円)
1つの免税事業者等からの経過措置の対象となる仕入(税込)の合計が、その年または事業年度で上限を超えた場合、超えた部分には経過措置を使えません。上限は、2024年10月1日から2026年9月30日までに開始する課税期間は10億円でしたが、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは1億円です。たとえば3月決算の法人なら、2027年3月期(2026年4月開始)はまだ10億円で、2027年4月に開始する事業年度から1億円になります。外注先の個人に多額の業務を委託している会社は、取引先ごとの年間の合計額を確認してください。
経過措置を受けるための帳簿と請求書
- 帳簿: 通常の記載事項(相手方の名称、取引年月日、内容、支払対価の額)に加えて、「70%控除対象」「免」など経過措置の適用を受ける旨を書きます。記号(※・☆など)を付け、「※は経過措置の対象」と別に示す方法も認められます
- 請求書等: 区分記載請求書と同じ事項(作成者の名称、取引年月日、内容と軽減税率の対象である旨、税率ごとの税込合計、宛名)が必要です。「軽減税率の対象である旨」と「税率ごとの税込合計」が書かれていない場合は、受け取った側が追記して保存できます
経過措置の計算方法
国税庁のQ&A(問130)の算式では、税率と割合をすべて掛けたあとで最後に1回だけ1円未満を処理します(切捨てまたは四捨五入)。
| 取引 | 消費税相当額 | 控除できる額 | 控除できない額 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月30日 消耗品 税込11,000円(10%) | 1,000円 | 800円(80%) | 200円 |
| 2026年10月23日 消耗品 税込11,000円(10%) | 1,000円 | 700円(70%) | 300円 |
| 2026年11月10日 外注費 税込55,000円(10%) | 5,000円 | 3,500円 | 1,500円 |
| 2026年11月2日 菓子 税込5,400円(8%) | 400円 | 280円 | 120円 |
端数が出る場合の例: 税込1,010円(10%)なら 1,010 × 10/110 × 70% = 64.27… → 64円(切捨て)。先に 1,010 × 10/110 = 91.8… を91円に切り捨ててから70%を掛けると 63.7 → 63円になり、1円ずれます。会計ソフトの計算方法がどちらになっているか確認しておくと安心です。
申告書に載る控除対象仕入税額(国税)は、たとえば税込11,000円(10%・70%)なら 11,000 × 7.8/110 × 70% = 546円です。
仕訳と税区分の例
税抜経理では、控除できる額だけを仮払消費税等にし、控除できない額は費用(資産なら取得価額)に含めます。税込経理では支払額の全額を費用に計上し、税区分で経過措置の対象であることを示します。税区分の名前は会計ソフトによって違います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 20,600 | 現金 | 22,000 | 課税仕入10%(経過措置70%) |
| 仮払消費税等 | 1,400 |
消費税相当額 2,000円のうち 70% の 1,400円が仮払消費税等、残り 600円は消耗品費に含めます。
| 経理方式 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 税抜経理 | 外注費(課税仕入10%・経過措置70%) | 51,500 | 普通預金 | 55,000 |
| 仮払消費税等 | 3,500 | |||
| 税込経理 | 外注費(課税仕入10%・経過措置70%) | 55,000 | 普通預金 | 55,000 |
| 取引の種類 | 税区分の例 | 控除 |
|---|---|---|
| 登録事業者からの仕入(インボイスあり) | 課税仕入10%・課税仕入8%(軽) | 100% |
| 登録番号のない仕入(2026年10月1日〜2028年9月30日) | 課税仕入10%(経過措置70%)など | 70% |
| 少額特例・帳簿のみの特例に当たる仕入 | 課税仕入10% など(摘要に特例の対象である旨) | 100% |
| 給与・保険料・土地の購入など | 対象外・非課税 | — |
少額特例(税込1万円未満)
一定規模以下の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスがなくても、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。相手が登録事業者か免税事業者かは関係ありません。
- 対象の事業者: 基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1億円以下、または特定期間(個人は前年1〜6月、法人は前事業年度の開始から6か月)の課税売上高が5,000万円以下。特定期間の判定は、納税義務の判定と違って給与の支払額では代えられません
- 対象の仕入: 2023年10月1日から2029年9月30日までに行う課税仕入れ。課税期間の途中でも、2029年10月1日以後の仕入は対象外です
- 1万円未満の判定: 1回の取引の税込合計で判定します。商品1つごとの金額ではありません
免税事業者の店で税込9,800円(10%)の備品を購入: 少額特例の対象事業者なら消費税相当額 890円を全額控除できます。対象外の事業者なら経過措置で 9,800 × 10/110 × 70% = 623.6… → 623円です。
同じ店で一度に 6,050円と4,950円の品物を買った場合は、合計 11,000円で1万円以上なので少額特例は使えず、経過措置で 700円です。
少額特例はインボイスの保存を不要にする制度で、売り手の交付義務がなくなるわけではありません。売り手が登録事業者なら、求められればインボイスを交付する必要があります。
帳簿の保存だけで全額控除できる取引
インボイスの交付を受けるのが難しい次の取引は、少額特例とは別に、事業規模にかかわらず、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます(経過措置ではなく全額)。
- 1回の取引が税込3万円未満の公共交通機関(鉄道・バス・船舶)の運賃(例: 電車代 2,980円 → 消費税相当額 270円を全額控除)
- 税込3万円未満の自動販売機・自動サービス機での購入やサービス
- ポストに投函した郵便の料金(切手を貼って差し出すもの)
- 従業員に支給する、通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当(会社がホテルなどに直接支払う場合は対象外)
- 入場券など、回収される適格簡易請求書の記載事項を満たす乗車券・入場券
- 古物商・質屋・宅地建物取引業者・再生資源の卸売業者が、登録事業者でない者から棚卸資産として買い受けるもの(2026年9月1日以後は、金属盗対策法の届出をした事業者が買い受ける特定金属くずも対象)
帳簿には、通常の記載事項に加えて、どの特例に当たるか(「3万円未満の鉄道料金」など)と、古物商などの場合は相手方の住所または所在地を書きます。公共交通機関でも、特急料金を含めて1回3万円以上になる場合は、インボイス(乗車券や領収書)が必要です。
売り手側の免除: 1万円未満の返品・値引き
税込1万円未満の値引き・返品・割戻しなどの「売上げに係る対価の返還等」は、返還インボイスの交付が免除されます。取引先が振込手数料を差し引いて入金してきたとき、その手数料を売上値引きとして処理する場合も、1万円未満なら返還インボイスは不要です。
よくある間違い
- 2026年10月以降の免税事業者からの仕入を80%のまま計算する: 課税仕入れの日が10月1日以降なら70%です。会計ソフトの税区分が改正後のものに更新されているか確認します
- 請求書の日付・支払日で80%か70%かを判断する: 引渡しの日・役務の完了の日で判断します
- 少額特例を商品1つごとに判定する: 1回の取引の税込合計で判定します
- 帳簿に「経過措置の対象」である旨を書いていない: 経過措置の要件です
- T番号の形式だけ見て、公表サイトで登録の有無・失効を確かめない: 番号が実在しても、取引日に登録が失効していることがあります
- 控除できない30%を仮払消費税等に含めてしまう: 税抜経理では、控除できない額は費用・資産の取得価額に含めます
この記事の計算ができる無料ツール
ISZ™ 仕訳AI では
ISZ™ 仕訳AI は、領収書・レシート・請求書の写真や PDF から登録番号を読み取り、税率と経過措置を反映した税区分付きの仕訳の下書きを作ります。
- インボイスの登録番号の抽出と、軽減税率・経過措置(80%→70%)の税区分
- 仕訳と原本を左右に並べて確認する画面。証憑ID で会計ソフト側から原本を逆引きできます
- 顧問先ごとの記帳ルールと、投入時の申し送りを AI が優先して反映
- 弥生・freee・マネーフォワード・TKC・JDL・勘定奉行の CSV で出力
免税事業者かどうか、どの特例に当たるかの判断は AI が確定するものではなく、税理士・経理担当者が確認して確定します。登録だけで証憑100枚まで無料で試せます(クレジットカード不要)。
よくある質問
インボイスの登録番号が正しいかどうかは、どう確認しますか?
まず「T+13桁」の形式と、法人ならチェックディジット(先頭1桁)が残り12桁から計算した数字と一致するかで読み違いを見つけます。そのうえで、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで番号を検索し、名称と、取引日に登録が有効かを確認します。
2026年10月以降、免税事業者からの仕入はいくら控除できますか?
2026年10月1日から2028年9月30日までに行った課税仕入れは、消費税相当額の70%です。税込11,000円(10%)なら 1,000円 × 70% = 700円を控除できます。2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月以降は控除できません。
9月に始まり10月に終わった外注作業は80%と70%のどちらですか?
サービスの課税仕入れの日は、原則として約束した役務の全部が完了した日です。10月1日以降に完了していれば、全体に70%を使います。商品の仕入は引渡しを受けた日で判定します。
少額特例は誰でも使えますか?
基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が対象で、2029年9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れに使えます。1万円未満かどうかは1回の取引の合計額で判定します。
経過措置の1億円の上限とは何ですか?
1つの免税事業者等からの経過措置の対象となる仕入(税込)が、その年または事業年度で1億円を超えた場合、超えた部分には経過措置を使えないという制限です。2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます(それより前は10億円)。
個人事業者の登録番号もチェックディジットで確認できますか?
個人事業者の登録番号は法人番号ではなく、法人番号と重ならない13桁の番号なので、法人番号の検算が一致しなくても誤りとは限りません。公表サイトで確認してください。
出典
- 国税庁 No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)
- 国税庁 No.6625 適格請求書等の記載事項
- 国税庁 No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
- 国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(問113〜113-4 経過措置、問130 税額計算)
- 国税庁 インボイス制度 令和8年度税制改正特集(7・5・3割控除、1億円の上限、特定金属くず特例)
- 国税庁 インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集(令和8年9月)
- 国税庁 少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要
- 国税庁 法人番号の構成(チェックデジットの算式)
- 国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト
- 国税庁 法人番号公表サイト
更新履歴
- 2026/10/24: 公開
この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。