仕訳の基本(借方と貸方)
仕訳は、1つの取引を「借方(左)」と「貸方(右)」の2つの面から記録するものです。どちらに書くかは、勘定科目のグループ(資産・負債・純資産・収益・費用)と、増えたか減ったかで決まります。
| グループ | 増えたとき | 減ったとき | 勘定科目の例 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 借方 | 貸方 | 現金、普通預金、売掛金、仮払消費税等、工具器具備品 |
| 負債 | 貸方 | 借方 | 買掛金、未払金、預り金、借入金、仮受消費税等 |
| 純資産 | 貸方 | 借方 | 資本金、繰越利益剰余金 |
| 収益 | 貸方(発生) | 借方(取消し) | 売上高、受取利息、雑収入 |
| 費用 | 借方(発生) | 貸方(取消し) | 旅費交通費、消耗品費、会議費、交際費、支払手数料 |
領収書の仕訳なら、借方に「何に使ったか」(費用や資産)、貸方に「どう払ったか」(現金・普通預金・未払金など)を書きます。法人カードで払った場合は、カードの引落しまでの間は未払金にするのが一般的です。
勘定科目の一覧
よく使う費用の科目
| 勘定科目 | 領収書・取引の例 | 税区分の目安 |
|---|---|---|
| 旅費交通費 | 電車・バス・タクシー、出張の宿泊、時間貸し駐車場、高速道路 | 課税10%(国際線は免税) |
| 通信費 | 携帯電話、インターネット回線、切手・はがき、業務用の SaaS | 課税10%(切手は購入時 非課税) |
| 荷造運賃 | 宅配便、商品の発送費、梱包材 | 課税10% |
| 消耗品費 | 文房具、コピー用紙、10万円未満のパソコン・周辺機器、日用品 | 課税10% |
| 会議費 | 打合せの飲食(1人10,000円以下)、会議の弁当・お茶、貸会議室 | 店内飲食10%/持ち帰り・弁当8% |
| 交際費 | 取引先との会食(1人10,000円超)、贈答品、慶弔金、ゴルフ接待 | 飲食・品物は課税/現金の慶弔は不課税 |
| 福利厚生費 | 健康診断、全員参加の社内行事、従業員への慶弔見舞金 | 内容による(見舞金は不課税) |
| 新聞図書費 | 書籍、雑誌、新聞、有料の情報サービス | 課税10%(定期購読の新聞は8%) |
| 研修費・諸会費 | セミナーの参加費、業界団体・商工会の会費 | 研修は課税10%/通常の会費は不課税 |
| 支払手数料 | 振込手数料、各種の事務手数料、決済手数料 | 課税10%(内容により非課税) |
| 支払報酬料 | 税理士・司法書士・弁護士・社労士の報酬 | 課税10%(個人への支払は源泉徴収) |
| 外注費 | デザイン・ライティング・制作などの業務委託 | 課税10%(個人の場合は源泉徴収の対象になることがある) |
| 地代家賃 | 事務所・店舗の家賃、月極駐車場 | 事業用は課税10%(居住用は非課税) |
| 賃借料 | レンタカー、機器のレンタル・リース | 課税10% |
| 水道光熱費 | 電気、ガス、水道 | 課税10% |
| 広告宣伝費 | Web 広告、チラシ、看板、ノベルティ | 課税10%(国外事業者の広告は要確認) |
| 修繕費 | 機器・建物の修理、原状回復 | 課税10% |
| 車両費 | ガソリン、車検の整備代、オイル交換 | 課税10%(軽油引取税は対象外) |
| 保険料 | 火災保険、自動車保険、賠償責任保険 | 非課税 |
| 租税公課 | 収入印紙、固定資産税、自動車税、登録免許税(法人税等は除く) | 不課税・非課税 |
| 給料手当・役員報酬・法定福利費 | 給与、役員報酬、社会保険料の会社負担分 | 不課税(通勤手当は課税仕入) |
| 減価償却費 | 固定資産の償却 | 対象外(取得時に控除) |
| 雑費 | どの科目にも当てはまらない少額の費用 | 内容による |
雑費は便利ですが、金額が大きくなると内容が分からない帳簿になります。毎月出てくる支出には、専用の科目を作る方が後で集計しやすくなります。
支払・計上でよく使う資産・負債の科目
| 勘定科目 | 使う場面 |
|---|---|
| 現金・普通預金 | 現金払い、口座からの振込・引落し |
| 売掛金・買掛金 | 商品・サービスの代金を後で受け取る・支払う(本業の取引) |
| 未払金・未収入金 | 本業以外の後払い(法人カードの利用、備品の購入など) |
| 仮払金・立替金 | 出張前の概算払い、取引先や従業員の分の立替え |
| 前払費用 | 翌期以降の分を先に払った家賃・保険料・年払いのサブスク |
| 預り金 | 給与・報酬から差し引いた源泉所得税・住民税・社会保険料 |
| 仮払消費税等・仮受消費税等 | 税抜経理での、仕入・経費の消費税と売上の消費税 |
| 工具器具備品・一括償却資産 | パソコン・家具などの資産計上 |
| 借入金・役員借入金 | 金融機関からの借入、社長からの借入 |
155の取引について、科目・仕訳例・税区分・確認する点を勘定科目・仕訳例かんたん検索で調べられます(タクシー代、ChatGPT などの海外サブスク、収入印紙、家事按分など)。
領収書の仕訳の例
以下の例は、とくに書いていなければ法人・税抜経理・2026年10月の取引です。消費税額は税込金額 × 10/110(8%は 8/108)で計算し、1円未満を切り捨てています。
例1: 文房具 3,300円(10%・登録番号あり)を現金で購入
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費(課税仕入10%) | 3,000 | 現金 | 3,300 |
| 仮払消費税等 | 300 |
3,300 × 10/110 = 300円が仮払消費税等、残りの 3,000円が本体です。税込経理なら、消耗品費 3,300/現金 3,300 の1行になります。
例2: タクシー代 3,800円を法人カードで支払った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費(課税仕入10%) | 3,455 | 未払金 | 3,800 |
| 仮払消費税等 | 345 |
3,800 × 10/110 = 345.4… → 345円。実務では、領収書に印字された消費税額を使います。カードの引落し日に、未払金 3,800/普通預金 3,800 の仕訳をします。
例3: 登録番号のない店で備品 22,000円(10%)を購入
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費(課税仕入10%・経過措置70%) | 20,600 | 現金 | 22,000 |
| 仮払消費税等 | 1,400 |
消費税相当額 2,000円のうち、控除できない 600円は本体(消耗品費)に含めます。2026年9月30日までの取引なら80%で、仮払消費税等 1,600円・消耗品費 20,400円です。税込1万円未満の仕入で少額特例を使える事業者なら、インボイスがなくても全額を控除できます。経過措置の詳しい計算は経過措置の計算ツールとインボイス制度の解説をご覧ください。
例4: 1枚のレシートに10%と8%が混ざっている
文具 550円(10%)と、打合せ用の飲み物(持ち帰り)324円(8%)、合計 874円を現金で購入した場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費(課税仕入10%) | 500 | 現金 | 874 |
| 会議費(課税仕入8%・軽減) | 300 | ||
| 仮払消費税等 | 74 |
550 × 10/110 = 50円、324 × 8/108 = 24円、合わせて 74円。税率ごとに分けて記帳する(区分経理)のが仕入税額控除の前提です。
飲食料品の消費税率を、2027年4月1日から2年間引き下げる予定が示されています(国税庁 消費税率引下げ特設サイト)。対象期間の取引は、8%(軽減)の税区分の扱いが変わるため、最新の情報を確認してください。
例5: 個人のデザイナーへの外注費 110,000円(税抜100,000円)を振込
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注費(課税仕入10%) | 100,000 | 普通預金 | 99,790 |
| 仮払消費税等 | 10,000 | 預り金(源泉所得税) | 10,210 |
個人へのデザイン料・原稿料・税理士報酬などは源泉徴収の対象です。請求書で消費税額が区分されていれば、税抜の金額だけを対象にできます。預り金は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。詳しくは報酬・料金の源泉徴収の計算ツールと源泉徴収の解説をご覧ください。
例6: パソコン 165,000円(税抜150,000円)を購入
資産になるかどうかは金額で判定します。税抜経理なら税抜の金額(税込経理なら税込)で判定し、この例では 150,000円です。
| 取得価額(1台・1組) | 処理 |
|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などで全額を費用にできる |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産(3年で均等に償却)を選べる。中小企業者等は下の特例も選べる |
| 20万円以上40万円未満 | 中小企業者等(青色申告)は、少額減価償却資産として全額を損金にできる(年300万円まで。2026年4月1日以後の取得は40万円未満、それより前は30万円未満) |
| 上記以外 | 工具器具備品などに計上し、耐用年数で減価償却(パソコンは4年など) |
中小企業者等の特例を使う場合の仕訳の例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費(少額減価償却資産・課税仕入10%) | 150,000 | 普通預金 | 165,000 |
| 仮払消費税等 | 15,000 |
この特例は、事業の用に供した年度に損金経理し、申告書に明細書(別表十六(七))を添付することが要件です。資産計上して減価償却する場合の計算は減価償却の計算ツールと減価償却の解説をご覧ください。
例7: 売掛金の入金から振込手数料が差し引かれた
売掛金 110,000円が、振込手数料 440円を差し引かれて 109,560円で入金された場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 109,560 | 売掛金 | 110,000 |
| 支払手数料(課税仕入10%) | 400 | ||
| 仮払消費税等 | 40 |
差し引かれた手数料を売上値引として処理する方法もあります。どちらにするかは方針を決めて、毎期同じ方法で処理します。
税抜経理と税込経理
消費税の経理方式には、本体と消費税を分ける税抜経理と、消費税を含めた金額で記帳する税込経理があります。免税事業者は税込経理です。
| 税抜経理 | 税込経理 | |
|---|---|---|
| 文房具 3,300円の仕訳 | 消耗品費 3,000/仮払消費税等 300/現金 3,300 | 消耗品費 3,300/現金 3,300 |
| 納める消費税 | 仮受消費税等と仮払消費税等の差額を未払消費税等に振り替える | 納付した年度に租税公課(未払計上もできる) |
| 資産・交際費の判定 | 税抜の金額で判定 | 税込の金額で判定 |
| 向いている事業者 | 課税事業者(期中の損益が消費税に左右されない) | 免税事業者、記帳を簡単にしたい小規模の事業者 |
経理方式は、会社全体で同じ方式を使うのが原則です(売上と仕入で方式を分ける方法などには一定のルールがあります)。どちらにするかは、顧問税理士と相談して決めます。
会議費と交際費の違い(1人1万円基準)
得意先・仕入先など事業の関係者との飲食費は、原則として交際費等です。ただし、1人当たりの金額が10,000円以下で、必要な事項を書いた書類を保存している飲食費は、交際費等から除かれます(租税特別措置法第61条の4。2024年4月1日以後の支出。それより前は5,000円以下)。交際費等から除いた飲食費は、会議費などの科目で処理するのが一般的です。
合計に使う金額は、税抜経理の法人なら税抜、税込経理の法人なら税込です。同じ領収書でも、経理方式で判定が変わることがあります。
| 領収書(税込・店内10%) | 人数 | 1人当たり(税抜経理) | 1人当たり(税込経理) | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 18,000円 | 2人 | 8,182円 | 9,000円 | どちらも会議費 |
| 33,000円 | 3人 | 10,000円 | 11,000円 | 税抜経理なら会議費、税込経理なら交際費 |
| 30,000円 | 2人 | 13,636.5円 | 15,000円 | どちらも交際費 |
税抜の金額は、税込金額から消費税額(× 10/110、1円未満切捨て)を引いて計算しています(18,000円なら 18,000 − 1,636 = 16,364円、2人で 8,182円)。
1万円基準を使うための書類
- 飲食の年月日
- 参加した得意先などの氏名・名称と、自社との関係
- 参加人数
- 金額と、飲食店の名称・所在地
- その他参考になる事項
領収書の裏や摘要に、参加者と人数を書いておくのが簡単です。記録がないと、1人1万円以下でも交際費等になります。
1万円基準の対象にならないもの
- 社内飲食費: 自社の役員・従業員(その親族)だけの飲食は、金額にかかわらず対象外です。全員参加の忘年会などは福利厚生費、特定の人だけの飲食は交際費等になることがあります
- ゴルフ・観劇・旅行などに付随する飲食(催し全体が接待として交際費等)
- お中元・お歳暮として飲食物を贈る費用(贈答の交際費)
なお、会議の際に出すお茶・お菓子・弁当程度の飲食は、1万円基準とは別に、会議費として処理できます。
交際費等の損金不算入額
交際費等になった支出は、法人税の計算で一部が損金になりません。期末資本金1億円以下の中小法人は、定額控除限度額(年800万円)と接待飲食費の50%のうち有利な方まで損金にできます(2027年3月31日までに開始する事業年度)。資本金1億円超の法人(100億円以下)は接待飲食費の50%だけ、100億円超の法人は全額が損金不算入です。
中小法人(資本金1,000万円): (1) 定額控除なら 12,000,000 − 8,000,000 = 4,000,000円、(2) 接待飲食費50%なら 12,000,000 − 4,500,000 = 7,500,000円 → 有利な (1) を選び、損金不算入額 4,000,000円
資本金3億円の法人: 12,000,000 − 9,000,000 × 50% = 7,500,000円
1回の飲食の判定と、年間の損金不算入額は会議費・交際費の判定ツールで計算できます。法人税の計算全体は法人税の解説をご覧ください。
科目選びでよくある間違い
- 高額な物を消耗品費にする: 10万円以上の物は、原則として資産計上の検討が必要です。セット(応接セットなど)は1組で判定します
- 参加者を残さずに会議費にする: 1人1万円以下でも、書類の記載がなければ交際費等です
- 個人への報酬で源泉徴収を忘れる: デザイン料・原稿料・講演料・士業の報酬などは、個人への支払なら源泉徴収が必要です。外注費や支払報酬料の仕訳に、預り金の行があるかを確かめます
- 法人税等を租税公課にする: 法人税・住民税・事業税(所得割)の納付は「法人税、住民税及び事業税」などで処理し、租税公課とは分けます
- 切手・収入印紙の税区分: 郵便局などで買う切手・収入印紙は、購入時は非課税です。切手は実際に使ったときに課税仕入(10%)になるのが原則で、自社で使う分を購入時に処理する方法もあります。方法を決めて毎期続けます。印紙税の金額は印紙税額の判定ツールで確認できます
- 同じ取引の科目が月ごとに違う: 期の途中で科目を変えると、前年との比較ができなくなります。迷ったら前期の総勘定元帳の処理に合わせます
ここでの科目と税区分は一般的な例です。業種や会社の規程、取引の事情で扱いが変わることがあります。最終的な判断は顧問税理士にご確認ください。
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よくある質問
取引先との飲食は、いくらまで会議費にできますか?
2024年4月1日以後の支出は、1人当たり10,000円以下です(それより前は5,000円以下)。1人当たりの金額は、税抜経理の法人なら税抜、税込経理の法人なら税込で計算します。飲食の年月日、参加者の氏名・関係、人数、金額、店名と所在地を書いた書類の保存が必要です。
1人1万円を少しでも超えたら、超えた分だけが交際費になりますか?
いいえ。1人当たり10,000円を超えると、超えた部分だけでなく、その飲食費の全額が交際費等になります。
登録番号のない店の領収書は、どう仕訳しますか?
税抜経理では、2026年10月1日以後の取引は消費税相当額の70%だけを仮払消費税等にし、残りは本体の費用に含めます(2026年9月30日までは80%)。たとえば 22,000円(10%)なら、仮払消費税等 1,400円、本体 20,600円です。少額特例を使える事業者の税込1万円未満の仕入は、全額を控除できます。
パソコンを買ったときの勘定科目は?
取得価額(税抜経理なら税抜)が10万円未満なら消耗品費、10万円以上20万円未満なら一括償却資産も選べます。中小企業者等(青色申告)は、40万円未満(2026年4月1日以後の取得)なら少額減価償却資産として全額を損金にできます(年300万円まで)。それ以外は工具器具備品に計上して減価償却します。
税理士への報酬の勘定科目は?
支払報酬料(支払手数料とする会社もあります)が一般的です。個人の税理士への支払は源泉徴収の対象で、1回の支払が100万円以下なら 10.21% を差し引き、預り金で処理します。税理士法人への支払は源泉徴収の対象外です。
8%と10%が混ざったレシートは、1行で仕訳してもいいですか?
税率ごとに分けて記帳する(区分経理)必要があります。科目が同じでも、税区分を10%と8%に分けた2行にします。
出典
- 国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
- 国税庁 No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
- 国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
- 国税庁 No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項
- 国税庁 No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
- 国税庁 No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき
- 国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
- 国税庁 消費税率引下げ特設サイト
更新履歴
- 2026/10/24: 公開
この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。