減価償却のしくみ
建物・車両・パソコン・ソフトウェアなど、長く使うにつれて価値が減る資産(減価償却資産)は、買った年に全額を費用にするのではなく、法定耐用年数にわたって少しずつ費用(法人税では損金)にします。この手続が減価償却です。
計算に必要なのは次の4つです。
- 取得価額: 購入代価に、引取運賃・据付費など事業に使うために直接かかった費用を加えた額。税抜経理なら税抜、税込経理なら税込の金額です
- 耐用年数: 「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表で、資産の種類・構造・用途ごとに決まっています
- 償却方法: 定額法・定率法など。資産の種類ごとに選び、税務署に届け出ます
- 事業に使い始めた日: 買った日ではなく、実際に使い始めた日(事業供用日)から償却を始めます
平成19年4月1日以後に取得した資産は、残存価額がなく、備忘価額1円を残すところまで償却できます。法人の場合、決算で費用に計上した額(損金経理した額)のうち、税法の償却限度額までが損金になります。償却限度額より少なく計上することもでき(任意償却)、多く計上した分は損金になりません。
取得価額による判定(10万円・20万円・40万円)
資産を買ったら、まず取得価額で処理を判定します。取得価額は、通常1単位として取引される単位(応接セットならテーブルと椅子の1組、カーテンなら部屋ごと)で判定します。
| 取得価額 | 選べる処理(法人) | 根拠 |
|---|---|---|
| 10万円未満(または使用可能期間1年未満) | 使い始めた年度に全額を損金(消耗品費など) | 法人税法施行令133条 |
| 10万円以上 20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に償却、または通常の減価償却。中小企業者等は下の特例も選べる | 同 133条の2 |
| 10万円以上 40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満) | 中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を損金(年合計300万円まで) | 租税特別措置法67条の5 |
| それ以上 | 通常の減価償却 |
中小企業者等の少額減価償却資産の特例(令和8年度改正)
- 対象法人: 資本金1億円以下などの中小企業者で、青色申告をしている法人のうち、常時使用する従業員が400人以下のもの(令和8年3月31日までの取得は500人以下)。通算法人などは除かれます
- 対象資産: 取得価額40万円未満の減価償却資産(令和8年4月1日以後の取得。それより前は30万円未満)。器具備品のほか、ソフトウェアなどの無形資産、中古資産も対象です。主要な事業でない貸付けの用に供した資産は除かれます
- 上限: 1事業年度の取得価額の合計が300万円まで(事業年度が1年未満なら 300万円 × 月数 ÷ 12)
- 期限: 令和11年3月31日までに取得して事業に使い始めた資産
- 手続: 使い始めた事業年度に全額を損金経理し、申告書に別表十六(七)を添付します
2026年3月31日に取得 → 30万円以上なので特例は使えず、通常の減価償却(耐用年数4年・定率法)
2026年4月1日に取得 → 40万円未満なので、少額減価償却資産の特例で35万円を全額損金にできる(年300万円の枠内)
税込経理の会社は税込金額で判定します。たとえば税抜38万円のパソコンは、税込経理では41.8万円となり特例の対象外です。また、一度資産に計上したものを翌期以後にまとめて費用にしても、特例は使えません。
法定の償却方法と届出
償却方法は資産の種類ごとに選び、設立初年度などの確定申告書の提出期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署に出します。届出がなければ、次の法定償却方法になります。
| 資産の種類 | 法人の法定償却方法 | 選べる方法 |
|---|---|---|
| 建物(平成10年4月1日以後取得) | 定額法 | 定額法のみ |
| 建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得) | 定額法 | 定額法のみ |
| ソフトウェア・特許権などの無形固定資産 | 定額法 | 定額法のみ |
| 器具備品・車両運搬具・機械装置など | 定率法(平成24年4月1日以後取得は200%定率法) | 定率法・定額法 |
個人事業主の法定償却方法は定額法です。また、個人の減価償却は必要経費に必ず算入する(強制償却)点で、法人の任意償却と違います。
主な資産の耐用年数
| 資産 | 耐用年数 |
|---|---|
| パソコン(サーバー用以外) | 4年 |
| サーバー用電子計算機、複写機・プリンター | 5年 |
| ソフトウェア(自社利用) | 5年 |
| 普通自動車 | 6年 |
| 軽自動車 | 4年 |
| 冷房用・暖房用機器(エアコン) | 6年 |
| 事務机・いす・キャビネット(金属製以外) | 8年 |
| 電話設備その他の通信機器 | 10年 |
| 建物附属設備(電気設備・照明設備) | 15年 |
| 建物(木造・事務所用) | 24年 |
| 建物(鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造・事務所用) | 50年 |
中古資産の耐用年数(簡便法)
中古資産は、残りの使用可能期間を見積もって耐用年数にできます。見積もりが難しいときは次の簡便法を使えます(1年未満の端数は切捨て、2年未満なら2年)。
(6年 − 3年)+ 3年 × 20% = 3.6年 → 端数を切り捨てて3年。7年経過した車なら 6年 × 20% = 1.2年 → 2年です。
簡便法は、その資産を使い始めた事業年度にしか選べません。また、事業に使うための改良費(資本的支出)が取得価額の50%を超えるときは使えません。
定額法の計算
定額法の償却率は耐用年数省令の別表第八で決まっており、「1 ÷ 耐用年数」を小数点以下3位に切り上げた率です(4年 0.250、6年 0.167、15年 0.067)。毎年同じ額を償却し、最後の年に備忘価額1円を残します。
毎年 1,200,000円 × 0.167 = 200,400円。1〜5年目は200,400円ずつ、6年目は残りの198,000円から1円を残した 197,999円。
200%定率法の計算(保証率・改定償却率)
平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法の償却率は、定額法の償却率の2倍(200%定率法)です。最初の年ほど償却額が大きく、帳簿価額が減るにつれて小さくなります。そのままでは耐用年数内に償却し終わらないため、調整前償却額が償却保証額を下回った年から、その年の期首帳簿価額(改定取得価額)に改定償却率を掛けた均等額に切り替えます。
償却率 0.400、改定償却率 0.500、保証率 0.10800 → 償却保証額 = 1,000,000円 × 0.10800 = 108,000円
| 年 | 期首帳簿価額 | 計算 | 償却額 | 期末帳簿価額 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,000,000 | 1,000,000 × 0.400 | 400,000 | 600,000 |
| 2年目 | 600,000 | 600,000 × 0.400 | 240,000 | 360,000 |
| 3年目 | 360,000 | 360,000 × 0.400 | 144,000 | 216,000 |
| 4年目 | 216,000 | 216,000 × 0.400 = 86,400 < 108,000 → 216,000 × 0.500 | 108,000 | 108,000 |
| 5年目 | 108,000 | 216,000 × 0.500(1円を残す) | 107,999 | 1 |
もう1つの例として、2,000,000円・耐用年数10年(償却率 0.200、改定償却率 0.250、保証率 0.06552、償却保証額 131,040円)では、6年目の調整前償却額は 655,360円 × 0.200 = 131,072円で償却保証額以上のため切り替えず、7年目に 524,288円 × 0.200 = 104,857円 が償却保証額を下回るので、7〜9年目は 524,288円 × 0.250 = 131,072円、10年目は残りの 131,071円 を償却します。
200%定率法の償却率表(抜粋)
| 耐用年数 | 定率法の償却率 | 改定償却率 | 保証率 | 定額法の償却率 |
|---|---|---|---|---|
| 2年 | 1.000 | ― | ― | 0.500 |
| 3年 | 0.667 | 1.000 | 0.11089 | 0.334 |
| 4年 | 0.500 | 1.000 | 0.12499 | 0.250 |
| 5年 | 0.400 | 0.500 | 0.10800 | 0.200 |
| 6年 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 | 0.167 |
| 7年 | 0.286 | 0.334 | 0.08680 | 0.143 |
| 8年 | 0.250 | 0.334 | 0.07909 | 0.125 |
| 9年 | 0.222 | 0.250 | 0.07126 | 0.112 |
| 10年 | 0.200 | 0.250 | 0.06552 | 0.100 |
| 12年 | 0.167 | 0.200 | 0.05566 | 0.084 |
| 15年 | 0.133 | 0.143 | 0.04565 | 0.067 |
| 20年 | 0.100 | 0.112 | 0.03486 | 0.050 |
耐用年数2〜50年のすべての率は、減価償却の計算ツールに入っています(耐用年数省令 別表第八・第十)。
期中に取得した資産の月割
事業年度の途中で使い始めた資産は、初年度の償却額を月割にします。月数は使い始めた月から期末の月までで、月の途中でも1か月と数えます。
初年度の月数 = 7月〜翌年3月の9か月。
200%定率法: 3,000,000円 × 0.333 × 9/12 = 749,250円(償却保証額 = 3,000,000円 × 0.09911 = 297,330円)
定額法: 3,000,000円 × 0.167 × 9/12 = 375,750円
| 事業年度 | 定率法の償却額 | 定率法の期末帳簿価額 | 定額法の償却額 |
|---|---|---|---|
| 2027年3月期(9か月) | 749,250 | 2,250,750 | 375,750 |
| 2028年3月期 | 749,499 | 1,501,251 | 501,000 |
| 2029年3月期 | 499,916 | 1,001,335 | 501,000 |
| 2030年3月期 | 333,444 | 667,891 | 501,000 |
| 2031年3月期(定率法は改定) | 223,075 | 444,816 | 501,000 |
| 2032年3月期 | 223,075 | 221,741 | 501,000 |
| 2033年3月期 | 221,740 | 1 | 119,249 |
2031年3月期は、調整前償却額 667,891円 × 0.333 = 222,407円 が償却保証額 297,330円 を下回るため、667,891円 × 改定償却率 0.334 = 223,075円 に切り替えています。初年度が月割になると、償却の終わる事業年度は耐用年数より1期後になります。
仕訳は次のとおりです(直接法)。
| 時期 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 取得時 | 車両運搬具 | 3,000,000 | 普通預金 | 3,000,000 |
| 2027年3月期の決算 | 減価償却費 | 749,250 | 車両運搬具 | 749,250 |
間接法では、貸方を「減価償却累計額」にして、資産の取得価額をそのまま残します。どちらでも償却限度額の計算は同じです。
一括償却資産(20万円未満・3年)
- 取得価額20万円未満の資産を、事業年度ごとにまとめて3年(36か月)で均等に損金にします。使い始めた月に関係なく、12か月の事業年度なら初年度から3分の1です
- 18万円の資産なら、毎年60,000円を3年間損金にします。6か月の事業年度(設立初年度など)なら初年度は 180,000円 × 6/36 = 30,000円 です
- 途中で売却・除却しても、残りはそのまま3年間で損金にします
- 中小企業者等でなくても使えます。固定資産税(償却資産)の申告の対象外になるのも特徴です
10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産・少額減価償却資産の特例・通常の償却のどれも選べます。償却資産申告の対象になるか、年300万円の枠を他の資産に使うかなどで選びます。
別表十六と償却超過額
法人税の申告では、償却方法ごとに明細書を添付します。
- 別表十六(一): 定額法、別表十六(二): 定率法の償却額の計算
- 別表十六(七): 少額減価償却資産の取得価額の損金算入(中小企業者等の特例)
- 別表十六(八): 一括償却資産の損金算入
決算で計上した減価償却費が償却限度額を超えた場合、超えた額(償却超過額)は別表四で加算します(留保)。翌期以後に計上額が限度額に満たない年(償却不足)があれば、その不足額の範囲で過去の償却超過額を減算(当期認容)します。逆に償却不足額は翌期に繰り越せず、その年の損金にはなりません。申告書の作り方は法人税申告書の作り方を参照してください。
償却資産申告(固定資産税)
法人税とは別に、事業用の償却資産には市町村の固定資産税がかかります。毎年1月1日現在に所有している償却資産を、1月31日までに資産のある市町村(東京23区は都税事務所)に申告します。
- 対象: 構築物(建物附属設備で家屋と一体でないものを含む)、機械装置、工具器具備品など。少額減価償却資産の特例で全額損金にした資産も対象です
- 対象外: 自動車税・軽自動車税の対象の車両、ソフトウェアなどの無形固定資産、10万円未満で全額損金にした資産、一括償却資産
- 評価額: 前年中に取得した資産は 取得価額 ×(1 − 減価率 ÷ 2)、その後は毎年 前年度の評価額 ×(1 − 減価率)。評価額の最低限度は取得価額の5%です。減価率は固定資産評価基準で耐用年数ごとに決まっています(耐用年数5年なら0.369)
- 免税点: 1つの市町村での課税標準額の合計が150万円未満なら課税されません(令和9年度分からは180万円未満)。免税点未満でも申告は必要です
- 税率: 標準税率1.4%
令和9年度(2027年1月1日現在): 1,000,000円 ×(1 − 0.369 ÷ 2)= 815,500円
令和10年度: 815,500円 ×(1 − 0.369)= 514,580.5円 → 514,580円
この資産だけなら課税標準額が免税点未満のため固定資産税はかかりませんが、申告は必要です。
償却資産の評価は、法人税の減価償却(200%定率法・月割)とは別の計算です。法人税で定額法を選んでいても、償却資産の評価は減価率で行います。
よくある間違い
- 購入日から償却を始める: 償却は事業に使い始めた日からです。期末に納品されても、使い始めていなければその期は償却できません
- 定率法の切替えを忘れる: 償却保証額を下回った年に改定償却率へ切り替えないと、耐用年数を過ぎても帳簿価額が残ります
- 30万円と40万円の境を取得日で判定しない: 令和8年3月31日までの取得は30万円未満、4月1日以後の取得は40万円未満です。従業員数の基準も500人以下から400人以下に変わりました
- 付随費用を取得価額に入れない: 引取運賃・据付費・設置工事費などは取得価額に含めます。含めると10万円・20万円・40万円の判定が変わることがあります
- 一括償却資産を月割にする: 一括償却資産は使い始めた月にかかわらず、事業年度の月数 ÷ 36 です
- 償却資産申告に一括償却資産を入れる/少額特例の資産を漏らす: 一括償却資産は対象外、少額減価償却資産の特例を使った資産は対象です
資本的支出(価値を高める改良)と修繕費の区分、耐用年数の判定(用途・構造)、特別償却や税額控除の選択は個別の判断です。迷うときは税理士に確認してください。
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ISZ™ 仕訳AI では
ISZ™ 仕訳AI は、領収書・請求書の読み取りで作った仕訳の下書きのうち、10万円以上の支出を資産計上の候補として決算前の要確認リストに理由付きで挙げます。資産にするか、少額・一括償却にするかの判断は税理士・経理担当者が行います。
- 固定資産台帳から減価償却費を計算し、決算整理の仕訳と法人税の別表(別表十六など)に反映
- 固定資産税の償却資産申告書を作成
- 仕訳と原本を左右に並べて確認でき、証憑ID で会計ソフト側から原本を逆引きできます
よくある質問
少額減価償却資産の特例は30万円未満ですか、40万円未満ですか?
令和8年度の税制改正で、令和8年4月1日以後に取得して事業に使い始めた資産は40万円未満になりました。それより前の取得は30万円未満です。対象は青色申告の中小企業者等(常時使用する従業員400人以下。令和8年3月31日までの取得は500人以下)で、年合計300万円が上限です。
200%定率法の改定償却率に切り替えるのはいつですか?
「期首帳簿価額 × 償却率」(調整前償却額)が「取得価額 × 保証率」(償却保証額)を下回った事業年度からです。1,000,000円・耐用年数5年なら4年目で、216,000円 × 改定償却率0.500 = 108,000円になります。
期の途中で買った資産の初年度の減価償却費は?
年間の償却額に「事業に使い始めた月から期末までの月数 ÷ 12」を掛けます。月の途中から使い始めても1か月と数えます。3月決算の会社が7月20日から使い始めたなら9か月分です。
一括償却資産と少額減価償却資産の特例はどちらが有利ですか?
少額減価償却資産の特例は使い始めた年に全額を損金にでき、一括償却資産は3年に分けます。一方、一括償却資産は固定資産税(償却資産)の申告の対象外で、少額減価償却資産の特例を使った資産は対象です。年300万円の枠や利益の見込みも含めて選びます。
中古の車の耐用年数は何年ですか?
簡便法では「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」(1年未満切捨て、最短2年)です。普通自動車(法定6年)で3年経過なら3年、法定耐用年数をすべて過ぎていれば 6年 × 20% = 1.2年 → 2年です。
償却資産申告はどの資産が対象ですか?
1月1日現在で所有している構築物・機械装置・工具器具備品などです。自動車税・軽自動車税の対象の車両、ソフトウェア、10万円未満で全額損金にした資産、一括償却資産は対象外です。少額減価償却資産の特例を使った資産は対象になります。
出典
- 国税庁 No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)
- 国税庁 No.5409 減価償却資産の償却方法の選定手続
- 国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
- 国税庁 No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
- 国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数
- 国税庁 減価償却資産の償却率等表
- e-Gov 法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令
- e-Gov 法令検索 法人税法施行令(第133条・第133条の2)
- 総務省 固定資産税の概要(償却資産の免税点・評価)
更新履歴
- 2026/10/24: 公開
この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。