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インボイス経過措置70%の仕訳例 — 2026年10月からの80%との分け方、少額資産・交際費・決算の処理

最終更新: 2026/10/25 / 執筆: ISZ GROUP(ISZ™ 仕訳AI 開発チーム)
この記事のポイント

2026年10月1日から、インボイス(適格請求書)のない仕入に使える経過措置の控除割合が、80%から70%に下がりました。この記事は、経理の現場で迷いやすい「どの取引が70%か」「仕訳はどう切るか」「法人税の計算で何が変わるか」を、仕訳例でまとめたものです。制度そのもの(記載事項、登録番号の確認、1億円の上限、少額特例)は インボイス制度の実務で解説しています。制度は2026年10月25日時点のもので、仕訳例の税額は 経過措置の計算ツールと同じ計算(支払対価 × 10/110 × 控除割合 を最後に1回だけ端数処理)で確かめています。

70%控除の基本と、国税庁の説明

令和8年度税制改正で、経過措置の期間が2年延び、控除割合は「7・5・3割」に見直されました。国税庁のインボイス特設サイト(令和8年度税制改正特集)は、次のように説明しています。

免税事業者などインボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れにつき、その一定割合を控除できる経過措置について、適用期限を2年間延長した上で、以下のとおり控除可能割合が見直されました。— 国税庁「インボイス制度 令和8年度税制改正特集」
課税仕入れを行った日控除できる割合
2023年10月1日〜2026年9月30日80%
2026年10月1日〜2028年9月30日70%
2028年10月1日〜2030年9月30日50%
2030年10月1日〜2031年9月30日30%
2031年10月1日〜0%

仕訳で大事なのは、法人税・所得税での仮払消費税等の額の考え方です。国税庁のタックスアンサー No.6375 は、経過措置の対象となる仕入について次のように説明しています。

支払対価の額のうちインボイス制度開始前の仮払消費税等の額の80パーセント相当額、70パーセント相当額、50パーセント相当額または30パーセント相当額を仮払消費税等の額とし、残額をその取引の対価の額として所得税または法人税の所得金額の計算を行うことになります。— 国税庁 タックスアンサー No.6375「税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」

つまり税抜経理なら、2026年10月以後の仕入は次のように計算します。

仮払消費税等 = 支払対価(税込)× 10/110 × 70%(軽減税率は × 8/108 × 70%) 費用・資産の金額 = 支払対価(税込)− 仮払消費税等

国税庁の「令和3年改正消費税経理通達関係Q&A」(法人税の取扱い)は改正前に作られたため、2026年10月以後の割合を「50%」として説明しています(問4・問9)。令和8年度改正後の割合は70%ですが、考え方(控除できる割合の分だけを仮払消費税等とし、残りを取引の対価に含める)は同じです。

80%と70%の分け方:9月・10月をまたぐ取引

割合は請求書の日付や支払日ではなく、課税仕入れを行った日で決まります。

  • 商品・消耗品: 引渡しを受けた日
  • サービス(役務の提供): 原則として約束した役務の全部が完了した日。9月に始まり10月に終わった作業は、全体が70%
  • 短期前払費用: 法人税の短期前払費用の取扱いで支払時に費用にしているものは、支払った日の割合
仕訳例1: 月締めの請求書をまたぐ場合(税抜経理)

登録番号のない仕入先から、9月21日〜10月20日分の請求書(税込99,000円、10月31日払い)を受け取った。内訳は 9月25日納品 55,000円、10月10日納品 44,000円(いずれも10%)。

日付借方金額貸方金額摘要
9月25日仕入高51,000買掛金55,00080%控除対象
仮払消費税等4,000
10月10日仕入高41,200買掛金44,00070%控除対象
仮払消費税等2,800

9月分: 55,000 × 10/110 = 5,000円の80% → 4,000円。10月分: 44,000 × 10/110 = 4,000円の70% → 2,800円。請求書の締め日(10月20日)でまとめて70%にすると、9月分の控除が400円少なくなります。請求書をまとめて計上する場合も、納品日ごとに税区分を分けてください。

仕訳例2: 9月に始まり10月に完了した外注作業

免税事業者の個人に依頼した清掃作業(9月15日開始、10月5日完了)の代金 税込165,000円を、10月31日に普通預金から支払った。

経理方式借方金額貸方金額
税抜経理外注費(70%控除対象)154,500普通預金165,000
仮払消費税等10,500
税込経理外注費(70%控除対象)165,000普通預金165,000

役務は10月5日に完了しているので、9月に行った部分も含めて全体が70%です。165,000 × 10/110 = 15,000円の70% → 10,500円。税込経理では全額を費用にし、消費税の申告で 165,000 × 7.8/110 × 70% = 8,190円(国税)を控除します。

よく出る取引の仕訳例

仕訳例3: 登録番号のない店で消耗品を現金購入(2026年10月23日・税込33,000円・10%)
借方金額貸方金額
消耗品費(70%控除対象)30,900現金33,000
仮払消費税等2,100

消費税相当額 3,000円のうち70%の2,100円が仮払消費税等、残り900円は消耗品費に含めます。帳簿(摘要)には「70%控除対象」など、経過措置の適用を受ける旨を書きます。税込1万円未満の仕入で少額特例の対象になる事業者なら、インボイスがなくても全額(10/110)を控除できます(少額特例)。

仕訳例4: 従業員が立て替えた経費

従業員が登録番号のない店で備品の部品を税込22,000円で購入し、会社が精算した。立替払いでも、会社の課税仕入れとして同じ70%で計算します(22,000 × 10/110 × 70% = 1,400円)。

借方金額貸方金額
修繕費(70%控除対象)20,600未払金(従業員)22,000
仮払消費税等1,400

電車・バスの運賃(1回税込3万円未満)や、従業員に支給する出張旅費・日当は、経過措置ではなく帳簿の保存だけで全額を控除できる取引です(帳簿のみで控除できる取引)。

備品・固定資産:少額減価償却資産の判定が変わる

税抜経理では、控除できない30%は資産の取得価額に含めます。国税庁のQ&A(問3)は、免税事業者から建物を取得した例で「支払対価の額のうち、80万円を仮払消費税等の額として取引の対価から区分し、1,020万円を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行う」と説明しています(80%の時期の例)。そのため、10万円・20万円・40万円の判定が、インボイスがある場合と変わることがあります。

仕訳例5: 免税事業者から中古のパソコンを税込107,800円で購入(2026年11月5日・税抜経理)
相手仮払消費税等取得価額10万円未満(全額損金)の判定
登録事業者(インボイスあり)9,80098,00010万円未満 → 消耗品費などにできる
免税事業者(70%控除)6,860100,94010万円以上 → 一括償却資産、または中小企業者等の特例(40万円未満)
借方金額貸方金額
工具器具備品(70%控除対象)100,940普通預金107,800
仮払消費税等6,860

107,800 × 10/110 = 9,800円の70% → 6,860円。中小企業者等なら、取得価額40万円未満の特例(令和8年4月1日以後の取得。年300万円まで)で全額を損金にできます。判定は 少額減価償却資産の判定ツール、償却の計算は 減価償却の計算方法を参照してください。

交際費:1人1万円の判定は「税抜+控除できない30%」

取引先との飲食費は、1人当たり10,000円以下なら交際費等から除けます(2024年4月1日以後の支出)。税抜経理では税抜の金額で判定しますが、インボイスのない店では仮払消費税等にできない部分が飲食費に含まれます。国税庁のQ&A(問7〔参考〕)も、仮払消費税等として経理した額を「飲食のために要した費用の額に算入した後の金額」で金額基準を判定するとしています。

仕訳例6: 登録番号のない飲食店で得意先と4人で会食(2026年11月・税込44,000円)
店仮払消費税等飲食費1人当たり判定
登録事業者4,00040,00010,0001万円以下 → 会議費など(交際費等から除外)
登録番号なし(70%控除)2,80041,20010,3001万円超 → 交際費等
借方金額貸方金額
交際費(70%控除対象)41,200現金44,000
仮払消費税等2,800

同じ金額の会食でも、店が登録事業者かどうかで科目が変わります。参加者・人数の記録が必要な点は同じです。損金不算入額の計算は 交際費の損金不算入額の計算ツールで確かめられます。

簡易課税・2割特例の事業者と、簡単な経理の方法

簡易課税や2割特例(個人事業者の令和9年分・令和10年分は3割特例)で申告する事業者は、仕入税額をみなし仕入率などで計算するので、仕入先が登録事業者かどうかは納める税額に影響しません。そこで、国税庁 No.6375 は次の処理も認めています。

継続適用を条件として、適格請求書等の記載事項に基づき計算した金額の有無にかかわらずすべての課税仕入れについて、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となるものは108分の8)を乗じて算出した金額を仮払消費税等の額として経理しているときにはその処理も認めることとされています。— 国税庁 タックスアンサー No.6375

簡易課税の会社なら、仕訳例3の消耗品は「消耗品費 30,000/仮払消費税等 3,000」と、インボイスがある場合と同じ仕訳でかまいません。

また、一般課税の事業者も含めて、経過措置の対象となる仕入を税込のまま費用にする方法が認められています(No.6375「経過措置期間中に……消費税等の額に相当する金額を取引の対価の額と区分して経理しなかったときは、仮払消費税等の額はないものとして……計算を行うことも認める」)。この場合、仕訳例3は「消耗品費 33,000/現金 33,000」となり、消費税の申告で控除した2,100円は、決算で仮受・仮払消費税等を精算するときに差額(雑益)として出てきます。

決算時に「雑損失」で処理した場合の申告調整

会計ソフトの設定が古いままで、期中に免税事業者からの仕入にも10/110の仮払消費税等を計上してしまうことがあります。決算で納付税額との差額を雑損失にした場合、税務上はその差額のうち控除できない部分が本来の費用・資産の取得価額です。国税庁のQ&A(問7〜問9)による取扱いは次のとおりです。

何の仕入か申告調整国税庁Q&A
経費(消耗品費・福利厚生費・外注費など)不要。どちらもその期の損金になるため問7
棚卸資産(商品)期末在庫に係る部分を所得に加算問6
減価償却資産雑損失を「償却費として損金経理をした金額」として扱い、償却限度額を超える部分を加算問8・問9
計算例: 9月決算の法人が2026年10月1日に免税事業者から建物を税込1,320万円で取得(耐用年数20年・定額法0.050)

課税売上割合が95%以上などで仕入税額を全額控除でき、ほかに差額がない場合です。

時点借方金額貸方金額
取得時(会計)建物12,000,000現金13,200,000
仮払消費税等1,200,000
決算時(会計)減価償却費600,000建物600,000
雑損失360,000(仮受・仮払消費税等の精算差額)
  • 税務上の仮払消費税等: 1,320万円 × 10/110 × 70% = 84万円 → 差額36万円は建物の取得価額
  • 償却限度額:(1,200万円 + 36万円)× 0.050 = 61万8,000円
  • 償却費として扱う額: 60万円 + 36万円 = 96万円 → 償却超過額 34万2,000円を別表四で加算(別表五(一)に建物減価償却超過額として留保)

期中から70%で仮払消費税等を計上していれば、この調整は不要です。国税庁のQ&A(問9)は同じ事例を改正前の50%・課税売上割合50%で計算しています。

10月以降に確認したいこと

  • 会計ソフトの税区分: 10月1日以後の取引に「70%控除」の税区分が使われているか。9月分の請求書を10月に入力するときは、日付(納品日)で80%になっているか
  • 月締めの請求書: 9月納品分と10月納品分を分けたか
  • 少額資産・交際費の判定: 控除できない30%を含めた金額で判定したか
  • 帳簿の記載: 「70%控除対象」など経過措置の適用を受ける旨を書いたか
  • 1億円の上限: 2026年10月1日以後に開始する課税期間から、1つの免税事業者等からの仕入が年1億円(税込)を超える部分には経過措置を使えない(詳しく)
  • 決算: 期中に10/110で計上した分があれば、資産・在庫に係る部分の申告調整

飲食料品の税率を2027年4月1日から2年間引き下げる法律案が国会で審議されています(2026年10月25日時点)。この記事の軽減税率(8%)の算式は、それまでの取引を前提にしています。

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  • 1つの免税事業者等からの仕入が上限(1億円)を超えた場合の注意表示
  • 仕訳と原本を左右に並べて確認する画面
  • 弥生・freee・マネーフォワード・TKC・JDL・勘定奉行の CSV で出力

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よくある質問

2026年10月の請求書に9月納品分が含まれている場合、80%と70%のどちらですか?

納品(引渡し)を受けた日で判定します。9月30日までに受け取った分は80%、10月1日以後に受け取った分は70%です。請求書の日付や支払日ではないので、月締めの請求書は納品日ごとに分けて仕訳します。

税抜経理で、控除できない30%はどの勘定科目にしますか?

その取引の費用(消耗品費・外注費など)や資産の取得価額に含めます。税込33,000円の消耗品なら、仮払消費税等2,100円、消耗品費30,900円です。雑損失や租税公課に分ける必要はありません。

免税事業者からの仕入を税込のまま費用にしてもよいですか?

認められています。国税庁 No.6375 は、経過措置期間中に消費税相当額を区分しないで経理したときは、仮払消費税等の額はないものとして所得金額を計算することも認めるとしています。消費税の申告では70%を控除し、精算差額は決算で雑益になります。

簡易課税の会社も、免税事業者からの仕入は70%で仮払消費税等を計算しますか?

簡易課税・2割特例の事業者は、継続適用を条件に、相手が登録事業者かどうかにかかわらず支払額の10/110(軽減税率は8/108)を仮払消費税等にできます。70%で計算しても誤りではありません。

免税事業者から買った備品は、少額減価償却資産の判定が変わりますか?

税抜経理では控除できない30%が取得価額に入るため、変わることがあります。税込107,800円のパソコンは、インボイスがあれば取得価額98,000円(10万円未満)ですが、70%控除なら100,940円で10万円以上になります。

期中に10/110で仮払消費税等を計上し、決算で差額を雑損失にしました。申告調整は必要ですか?

経費の分は不要です。減価償却資産に係る部分は償却費として損金経理した額として扱い、償却限度額を超える部分を加算します。期末在庫に係る部分も加算が必要です(国税庁 消費税経理通達関係Q&A 問6〜問9)。

出典

更新履歴

  • 2026/10/25: 公開

この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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