社会保険料の全体像
会社が給与を支払うときに計算する社会保険料は、次の6つです。健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金は標準報酬月額に料率を掛け、雇用保険は実際に支払った賃金に料率を掛けます。
| 保険料 | 計算の基礎 | 料率(労使合計・令和8年度) | 従業員負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ) | 標準報酬月額 | 都道府県別 9.21%〜10.55%(東京都 9.85%) | 半分 |
| 介護保険(40歳以上65歳未満) | 標準報酬月額 | 1.62% | 半分 |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月分から) | 標準報酬月額 | 0.23% | 半分 |
| 厚生年金保険 | 標準報酬月額 | 18.3% | 半分 |
| 雇用保険(一般の事業) | 実際の賃金 | 1.35% | 0.5%(事業主 0.85%) |
| 子ども・子育て拠出金 | 厚生年金の標準報酬月額 | 0.36% | なし(事業主のみ) |
このほかに労災保険料がありますが、全額を事業主が負担し、給与からは控除しません。健康保険組合に加入している会社は、健康保険・介護保険の料率と負担割合が組合ごとに違います(後述)。
標準報酬月額の決め方
標準報酬月額は、毎月の給与(報酬月額)を区切りのよい金額の等級に当てはめたものです。保険料は、毎月の給与が少し増減しても、標準報酬月額が変わらない限り同じ額になります。
報酬に含めるもの・含めないもの
- 含める: 基本給、残業手当、役職手当、家族手当、住宅手当、通勤手当(所得税では非課税でも含める)、現物で支給する食事・住宅など
- 含めない: 年3回以下の賞与(標準賞与額として別に計算)、結婚祝金・見舞金などの臨時のもの、出張旅費の実費など
所得税の源泉徴収では非課税の通勤手当を除きますが、社会保険の報酬月額には通勤手当を含めます。この違いを取り違えると、標準報酬月額が1〜2等級ずれることがあります。
等級表(抜粋)
| 等級(健保/厚年) | 標準報酬月額 | 報酬月額 | 従業員負担(東京都・40歳未満) |
|---|---|---|---|
| 18/15 | 220,000円 | 210,000円以上 230,000円未満 | 31,218円 |
| 19/16 | 240,000円 | 230,000円以上 250,000円未満 | 34,056円 |
| 20/17 | 260,000円 | 250,000円以上 270,000円未満 | 36,894円 |
| 21/18 | 280,000円 | 270,000円以上 290,000円未満 | 39,732円 |
| 22/19 | 300,000円 | 290,000円以上 310,000円未満 | 42,570円 |
| 23/20 | 320,000円 | 310,000円以上 330,000円未満 | 45,408円 |
| 24/21 | 340,000円 | 330,000円以上 350,000円未満 | 48,246円 |
| 25/22 | 360,000円 | 350,000円以上 370,000円未満 | 51,084円 |
従業員負担の列は、健康保険(4.925%)・子ども・子育て支援金(0.115%)・厚生年金(9.15%)の合計です(雇用保険を除く)。健康保険の標準報酬月額は58,000円(第1級)〜1,390,000円(第50級)、厚生年金は88,000円(第1級)〜650,000円(第32級)です。厚生年金の上限は、令和7年の年金制度改正により、2027年9月分から68万円、2028年9月分から71万円、2029年9月分から75万円に段階的に引き上げられる予定です。
いつ決まるか(資格取得時決定・定時決定・随時改定)
| 決め方 | いつ | 内容 |
|---|---|---|
| 資格取得時決定 | 入社したとき | 入社時の給与(残業手当の見込みを含む)で決める |
| 定時決定(算定基礎届) | 毎年7月1日〜7月10日に届出 | 4月・5月・6月の報酬の平均で決め、9月分から翌年8月分まで使う |
| 随時改定(月額変更届) | 固定的賃金が変わったとき | 変動月から3か月の平均で2等級以上変わったら、4か月目から改定 |
平均 =(300,000円 + 310,000円 + 320,000円)÷ 3 = 310,000円 → 310,000円以上330,000円未満の行 → 標準報酬月額 320,000円(9月分から)
4月〜6月に残業が多いと、その年の9月から1年間の保険料が高くなります。随時改定は昇給・降給などの固定的賃金の変動が条件で、残業手当の増減だけでは対象になりません。
令和8年度の保険料率
協会けんぽの健康保険料率(都道府県別・抜粋)
| 都道府県 | 健康保険料率 | 介護保険料を含む |
|---|---|---|
| 北海道 | 10.28% | 11.90% |
| 東京都 | 9.85% | 11.47% |
| 神奈川県 | 9.92% | 11.54% |
| 埼玉県 | 9.67% | 11.29% |
| 愛知県 | 9.93% | 11.55% |
| 大阪府 | 10.13% | 11.75% |
| 福岡県 | 10.11% | 11.73% |
| 新潟県(最も低い) | 9.21% | 10.83% |
| 佐賀県(最も高い) | 10.55% | 12.17% |
47都道府県すべての料率は社会保険料の計算ツールに入っています。協会けんぽの都道府県の支部は、事業所の所在地(本店ではなく、社会保険の適用を受けている事業所)で決まります。
新しい料率を使い始める月
- 協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率: 2026年3月分(4月納付分)から
- 子ども・子育て支援金: 2026年4月分(5月納付分)から
- 雇用保険料率(令和8年度): 2026年4月1日以後に締日がある賃金から
保険料は前月分を当月の給与から控除する「翌月徴収」が一般的です。翌月徴収の会社では、4月に支給する給与から新しい健康保険料率、5月に支給する給与から子ども・子育て支援金を控除します。当月徴収の会社では1か月早くなります。どちらの方式かは会社の規程と過去の給与明細で確認してください。
計算例: 月給30万円
| 従業員負担(標準報酬月額30万円・賃金30万円) | 東京都・30歳 | 東京都・45歳 | 大阪府・30歳 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(45歳は介護保険を含む) | 14,775円 | 17,205円 | 15,195円 |
| 子ども・子育て支援金 | 345円 | 345円 | 345円 |
| 厚生年金 | 27,450円 | 27,450円 | 27,450円 |
| 雇用保険 | 1,500円 | 1,500円 | 1,500円 |
| 合計 | 44,070円 | 46,500円 | 44,490円 |
支援金 300,000円 × 0.23% ÷ 2 = 345円、厚生年金 300,000円 × 18.3% ÷ 2 = 27,450円、雇用保険 300,000円 × 0.5% = 1,500円
事業主負担: 健康保険+介護 17,205円・支援金 345円・厚生年金 27,450円・雇用保険 2,550円・子ども・子育て拠出金 1,080円 → 合計 48,630円
東京都・30歳の人は、給与 300,000円から社会保険料等 44,070円を引いた 255,930円で月額表を引き、源泉徴収税額(甲欄・扶養0人)は 6,320円になります。続きは源泉徴収税額の計算方法をご覧ください。手取りまでまとめて計算するなら給与の手取りの計算ツールが便利です。
子ども・子育て支援金(2026年4月から)
子ども・子育て支援金は、児童手当の拡充などの子育て支援策に充てるため、2026年度から医療保険の保険料と一緒に集める仕組みです。会社員の場合は、健康保険料と同じく標準報酬月額・標準賞与額に支援金率を掛け、労使で折半します。
- 協会けんぽの支援金率は0.23%(従業員負担 0.115%)。標準報酬月額30万円なら従業員負担は月345円です
- 2026年4月分の保険料から。翌月徴収なら5月の給与から控除が始まります
- 賞与にもかかります(標準賞与額 × 0.23% ÷ 2)
- 介護保険と違って年齢による区分はなく、40歳未満でもかかります。75歳以上で健康保険の被保険者でなくなった人は、会社の給与からは控除しません
- 給与明細では、健康保険料と分けて表示しておくと従業員への説明がしやすくなります
名前が似ている「子ども・子育て拠出金」(0.36%)は、以前からある事業主だけが負担する拠出金で、給与からは控除しません。支援金を拠出金と混同して従業員から0.36%を控除する、あるいは支援金を控除し忘れる、といった間違いに注意してください。健康保険組合・共済組合の支援金率と負担割合は、加入先からの通知で確認します。
介護保険と年齢による違い
法律上、年齢は誕生日の前日に1つ加わります。保険料は月単位なので、「誕生日の前日が属する月」からその年齢の扱いになります。
| 年齢 | 変わること |
|---|---|
| 40歳になる月 | 介護保険料(1.62%・労使折半)がかかり始める |
| 65歳になる月 | 介護保険料を給与から控除しなくなる(市区町村が年金からの天引きなどで徴収) |
| 70歳になる月 | 厚生年金の被保険者でなくなる(70歳以上被用者の届出は必要) |
| 75歳になる日 | 健康保険から後期高齢者医療制度へ移る(健康保険料・支援金を控除しない) |
1986年10月2日生まれ → 40歳に達するのは2026年10月1日 → 2026年10月分から介護保険料
1日生まれの人は、誕生月の前月分から変わります。翌月徴収の会社では、9月分の保険料は10月の給与から控除するので、給与明細で介護保険料が増えるのは10月支給分からです。
端数処理(50銭)と事業主負担
給与から控除する従業員負担の1円未満は、50銭以下は切捨て、50銭を超えると切上げです(健康保険法などの通貨の端数処理。労使の特約があればそれに従います)。従業員が保険料を現金で会社に払う場合は、50銭未満切捨て・50銭以上切上げになります。
支援金 790,000円 × 0.23% ÷ 2 = 908.5円 → 908円
厚生年金は上限の 650,000円で計算 → 650,000円 × 18.3% ÷ 2 = 59,475円(報酬月額が80万円でも厚生年金は65万円が上限)
会社が年金事務所に納める額は、全従業員の標準報酬月額の合計に料率を掛けて計算されます(1円未満切捨て)。そのため、事業主負担は「納付額 − 従業員から預かった額の合計」となり、従業員ごとに折半した額の合計とは数円ずれることがあります。
賞与の社会保険料(標準賞与額)
賞与の健康保険料・厚生年金保険料は、賞与の額の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に料率を掛けます。上限は、健康保険(介護保険・支援金を含む)が年度(4月〜翌年3月)の累計573万円、厚生年金が1か月150万円です。賞与を支給したら、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を出します。
雇用保険(実際の賞与の額)500,000円 × 0.5% = 2,500円 → 合計 73,450円
資格喪失月(退職日の翌日が属する月)に支払った賞与には保険料がかかりません。月末に退職した人は翌月1日が資格喪失日になるため、退職した月の賞与にはかかります。賞与の源泉徴収税額まで含めた手取りは賞与の源泉徴収税額の計算ツールで計算できます。
雇用保険料
雇用保険料は、標準報酬月額ではなくその月に支払う賃金総額(残業手当・通勤手当を含み、賞与も対象)に料率を掛けます。役員(使用人兼務役員の使用人分を除く)や、週20時間未満の人などは被保険者になりません。
| 事業の種類(令和8年度) | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1,000 | 8.5/1,000 | 13.5/1,000 |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 |
| 建設の事業 | 6/1,000 | 10.5/1,000 | 16.5/1,000 |
令和7年度(一般の事業 労働者 5.5/1,000)から引き下げられました。新しい率は2026年4月1日以後に締日がある賃金から使います。3月21日〜4月20日の賃金を4月25日に支払うなら、締日が4月20日なので新しい率です。
法定福利費の仕訳
従業員負担分は給与から預かって預り金に、事業主負担分は法定福利費にするのが一般的です。上の東京都・45歳の例で、9月分を10月の給与から控除し、10月末に口座振替で納付する場合は次のとおりです。
| 時期 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 10月の給与支給 | 給料手当 300,000 | 預り金(社会保険料)45,000 預り金(雇用保険料)1,500 預り金(源泉所得税) 普通預金(差引支給額) |
| 10月末の納付(年金事務所) | 預り金(社会保険料)45,000 法定福利費 46,080 | 普通預金 91,080 |
納付額 91,080円は、300,000円 ×(11.47% + 0.23% + 18.3% + 0.36%)です。預り金 45,000円は健康保険・介護 17,205円 + 支援金 345円 + 厚生年金 27,450円、法定福利費 46,080円はそれに拠出金 1,080円を加えた事業主負担です。
- 雇用保険料: 労働保険の年度更新(毎年6月1日〜7月10日)で1年分を概算で申告・納付します。事業主負担は納付時に法定福利費とし、従業員から預かった分は預り金と相殺するなど、会社ごとに処理の方法を決めておきます
- 月次決算: 発生主義で月次の損益を見る場合は、9月分の事業主負担を9月末に法定福利費/未払費用として計上します
- 役員: 役員報酬からも健康保険・厚生年金は控除します(雇用保険は原則として対象外)
勘定科目の使い分けは勘定科目の選び方も参考にしてください。
健康保険組合に加入している場合
健康保険組合は、料率と負担割合を組合ごとに決めています。事業主が半分より多く負担する組合も少なくありません。組合の保険料額表で、合計の料率と従業員負担の料率を確認して計算します。厚生年金・雇用保険・子ども・子育て拠出金の料率は、加入する健康保険にかかわらず同じです。
よくある間違い
- 実際の給与にそのまま料率を掛けている。健康保険・厚生年金は標準報酬月額で計算します。雇用保険だけが実際の賃金です
- 通勤手当を報酬月額に入れていない。社会保険では通勤手当も報酬です
- 4月の昇給をすぐ保険料に反映している。2等級以上の変動なら随時改定で7月分から(4月・5月・6月の平均)、それ以外は定時決定で9月分から変わります
- 協会けんぽの新料率を4月分から使っている。令和8年度の健康保険料率は3月分からです(支援金は4月分から)
- 40歳の誕生月から介護保険料をかけている。誕生日の前日が属する月からです。1日生まれは前月分からです
- 50銭ちょうどを切り上げている。給与から控除する場合、50銭以下は切捨てです
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よくある質問
子ども・子育て支援金はいつから、いくら引かれますか?
2026年4月分の保険料から、協会けんぽでは標準報酬月額 × 0.23% を労使で折半します。標準報酬月額30万円なら従業員負担は月345円です。翌月徴収の会社では5月の給与から控除が始まります。賞与にもかかります。
月給30万円の社会保険料(従業員負担)はいくらですか?
協会けんぽ東京都・40歳未満なら、健康保険 14,775円・子ども・子育て支援金 345円・厚生年金 27,450円・雇用保険 1,500円で、合計 44,070円です(令和8年度)。40歳以上65歳未満は介護保険料が加わり 46,500円です。
40歳になると、いつから介護保険料がかかりますか?
40歳の誕生日の前日が属する月の分からです。1日生まれの人は誕生月の前月分からになります。翌月徴収なら、給与から控除するのはその翌月の給与からです。
社会保険料の端数はどう処理しますか?
給与から控除する従業員負担は、1円未満が50銭以下なら切捨て、50銭を超えれば切上げです。労使で別の特約があればそれに従います。
標準報酬月額はいつ変わりますか?
原則として毎年4月〜6月の報酬の平均で決め(定時決定)、9月分から翌年8月分まで使います。昇給などで固定的賃金が変わり、3か月の平均で2等級以上の差が出たときは、変動月から4か月目に改定されます(随時改定)。
子ども・子育て支援金と子ども・子育て拠出金は何が違いますか?
支援金は2026年4月分から医療保険の保険料と一緒に集める新しい仕組みで、労使で折半します。拠出金(0.36%)は以前からある事業主だけが負担するもので、給与からは控除しません。
出典
- 協会けんぽ 令和8年度保険料額表(令和8年3月分から)
- 協会けんぽ 都道府県毎の保険料額表
- 日本年金機構 厚生年金保険の保険料(標準報酬月額・標準賞与額)
- 日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
- 日本年金機構 随時改定(月額変更届)
- 日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き
- 日本年金機構 厚生年金保険料額表
- こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度
- 厚生労働省 雇用保険料率について
- 厚生労働省 令和8年度の雇用保険料率について PDF
更新履歴
- 2026/10/24: 公開
この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。