インボイス制度が始まった2023年10月1日から、消費税の売上税額と仕入税額は、それぞれ「積上げ計算」と「割戻し計算」を選べるようになりました。どちらでも申告はできますが、選べる組み合わせには制限があり、取引の件数や端数処理の方法によって納める税額が変わります。差は、件数の少ない会社なら数円〜数百円、レシートの多い小売・飲食などでは数千円以上になることがあります。この記事は、2026年10月31日時点の消費税法・同法施行令・基本通達と、国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和8年5月改訂)にもとづいて、計算方法の違い、併用のしかた、申告書の書き方を、計算例で整理したものです。一般課税を前提とし、売上・仕入の返品や値引きなど返還等の税額の計算は扱いません。納付税額の計算の全体は 消費税の計算方法(一般課税の納付税額)で解説しています。
5つの計算方法と根拠の条文
売上税額に2つ、仕入税額に3つの計算方法があります。国税庁のパンフレット「適格請求書等保存方式の概要」は、次のように説明しています。
令和5年10月1日以降の売上税額及び仕入税額の計算は、「積上げ計算」又は「割戻し計算」を選択できます。— 国税庁「適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-」(令和8年5月)
| 区分 | 計算方法 | 計算式 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 売上税額 | 割戻し計算(原則) | 税率ごとの税込売上の合計 × 100/110(軽減税率は 100/108)→ 千円未満切捨て → × 7.8%(6.24%) | 消費税法45条1項 |
| 積上げ計算(特例) | 交付したインボイス(適格請求書・適格簡易請求書)に記載した消費税額等の合計 × 78/100 | 同法45条5項、施行令62条1項 | |
| 仕入税額 | 請求書等積上げ計算(原則) | 受け取ったインボイスなどに記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の合計 × 78/100 | 施行令46条1項 |
| 帳簿積上げ計算 | 課税仕入れのつど、支払対価 × 10/110(8/108)を計算して帳簿に記載した額(1円未満は切捨て又は四捨五入)の合計 × 78/100 | 施行令46条2項 | |
| 割戻し計算 | 税率ごとの支払対価の合計 × 7.8/110(6.24/108) | 施行令46条3項 |
「78/100」は、インボイスに書く消費税額等(国税7.8%+地方消費税2.2%)から国税の部分を取り出すための割合です。軽減税率の6.24%+1.76%も同じ比率なので、税率にかかわらず 78/100 を掛けます。
売上は割戻し計算、仕入は請求書等積上げ計算が「原則」で、原則どうしの組み合わせが最も一般的です。売上の積上げ計算は、交付したインボイスの写しの保存が条件です(消費税法45条5項。電子で交付したものはそのデータの保存)。
売上税額:割戻し計算と積上げ計算
割戻し計算
税込売上の合計から税抜の課税標準額を出し、税率を掛けます。国税庁のQ&A(問119)は次のとおりです。
適格請求書等保存方式における売上税額については、原則として、課税期間中の課税資産の譲渡等の税込金額の合計額に110分の100(軽減税率の対象となる場合は108分の100)を掛けて計算した課税標準額に7.8%(軽減税率の対象となる場合は6.24%)を掛けて算出します(割戻し計算)。— 国税庁 インボイスQ&A 問119(令和8年5月改訂版 210ページ)
課税標準額は国税通則法118条1項により千円未満を切り捨て、消費税額の1円未満も切り捨てます(タックスアンサー No.6371)。国税庁の「申告書(一般用)の書き方」の設例では、123,090,909円 → 123,090,000円(千円未満切捨て)× 7.8% = 9,601,020円 と計算しています。
積上げ計算
交付したインボイスに書いた消費税額等を課税期間の分だけ合計し、78/100 を掛けます。条件と注意点は3つです。
- 写しの保存: 交付したインボイス・レシートの写し(控え)を保存していること。顧客がレシートを受け取らなかった場合も、その写しを保存していれば積上げ計算に使えます(Q&A 問120)
- 税額の記載: 適格簡易請求書(レシートなど)は「適用税率」か「税率ごとの消費税額等」のどちらかを書けばよい書類ですが、適用税率だけを書いたものは積上げ計算に使えません(Q&A 問119、基本通達15-2-1の2(注)1)
- 課税期間をまたぐ請求書: 3月21日〜4月20日分のように期末をまたぐ請求書は、翌期の消費税額も合計して記載されているため、そのままでは積上げ計算に使えません(Q&A 問125。併用で対応できます)。ただし、法人税で決算締切日(法人税基本通達2-6-1)を継続して3月20日とし、消費税の資産の譲渡等の時期も同じにしている(消費税法基本通達9-6-2)場合は、課税期間ごとの区分の対応は不要です(問125の(注))
延払基準・工事進行基準・現金主義会計の特例を適用する課税資産の譲渡等などは、積上げ計算の対象外です(消費税法45条5項ただし書、施行令62条2項)。
ただし、適格簡易請求書の記載事項は、「適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等」であるため、「適用税率」のみを記載して交付する場合、税率ごとの消費税額等の記載がないため、積上げ計算を行うことはできません。— 国税庁 インボイスQ&A 問119
インボイスの消費税額等の端数処理は、1枚の適格請求書につき税率ごとに1回で、切上げ・切捨て・四捨五入などの方法は任意です。品目ごとに端数処理して合計する書き方は認められません(Q&A 問57、施行令70条の10)。積上げ計算では、この1枚ごとの端数処理の結果がそのまま売上税額に積み上がります。端数処理の全体は 端数処理の早見表(消費税)にまとめています。
レシートには税率ごとの消費税額等を書き、1円未満は切り捨てている(1,000 × 10/110 = 90.90… → 90円)。
| 計算方法 | 計算 | 売上税額(国税) |
|---|---|---|
| 割戻し計算 | 10,000,000 × 100/110 = 9,090,909 → 9,090,000(千円未満切捨て)× 7.8% | 709,020 |
| 積上げ計算(切捨て) | 90円 × 10,000回 = 900,000 × 78/100 | 702,000 |
| (参考)積上げ計算(四捨五入) | 91円 × 10,000回 = 910,000 × 78/100 | 709,800 |
レシートの端数を切り捨てている店では、積上げ計算の売上税額が割戻し計算より 7,020円 少なくなります(地方消費税は、百円未満を切り捨てた差引税額 × 22/78 を百円未満で切り捨てて計算するので、納付税額の合計の差はこれより大きくなります)。同じ店でも四捨五入なら、この例では積上げ計算のほうが780円多くなります。ただし、売上を積上げにすると仕入は割戻し計算を使えなくなるため(次の節)、仕入側の差も合わせて比べます。
仕入税額:請求書等積上げ・帳簿積上げ・割戻し計算
請求書等積上げ計算(原則)
受け取ったインボイスに記載された消費税額等を合計し、78/100 を掛けます。消費税額等の記載がない適格簡易請求書(適用税率だけのレシート)は、税込金額 × 10/110(8/108)で計算した額を使います(施行令46条1項2号、Q&A 問128)。公共交通機関の運賃など帳簿の保存だけで控除できる課税仕入れは、支払対価 × 10/110(8/108)の1円未満を切捨て又は四捨五入した額です(施行令46条1項6号)。
帳簿積上げ計算
課税仕入れのつど計算した仮払消費税額等を帳簿に記載し、その合計に 78/100 を掛けます。
課税仕入れの都度(注1)、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額(1円未満の端数が生じたときは、端数を切捨て又は四捨五入します。)を仮払消費税額等(注2)などとし、帳簿に記載(計上)している場合は、その金額の合計額に100分の78を掛けて算出する方法も認められます(帳簿積上げ計算)(消令46②)。— 国税庁 インボイスQ&A 問126(215ページ)
「課税仕入れの都度」は、1取引ごとに限りません。基本通達11-1-10とQ&A 問126(注1)は、インボイスを受け取った際にその書類を単位として計上する場合のほか、一定期間の課税仕入れをまとめた請求書を単位として計上する場合も含むとしています。インボイスでない納品書・請求書の単位や、買手の支払基準など合理的な単位で継続して計上することも差し支えないとされています。税抜金額が書かれた納品書を基礎に、税抜金額 × 10/100(8/100)で仮払消費税額等を計算する方法も認められています(Q&A 問126(注2))。基本通達11-1-10の単位は「課税期間の範囲内で」とされているので、期末をまたぐ請求書は期間で分けて計上します。端数処理は切捨てか四捨五入で、切上げはできません。
割戻し計算
税率ごとの支払対価の合計に 7.8/110(6.24/108)を掛けます。計算は簡単ですが、売上税額を割戻し計算している場合に限られます(Q&A 問118・問126)。
仕入先のインボイスは消費税額等の1円未満を切り捨てて90円と記載している。
| 計算方法 | 計算 | 仕入税額(国税) |
|---|---|---|
| 請求書等積上げ計算 | 90円 × 10,000件 = 900,000 × 78/100 | 702,000 |
| 帳簿積上げ計算(四捨五入) | 1,000 × 10/110 = 90.90… → 91円 × 10,000件 = 910,000 × 78/100 | 709,800 |
| 帳簿積上げ計算(切捨て) | 90円 × 10,000件 = 900,000 × 78/100 | 702,000 |
| 割戻し計算 | 10,000,000 × 7.8/110 = 709,090.9…(1円未満切捨て) | 709,090 |
請求書等積上げ計算は仕入先の端数処理に左右されます。帳簿積上げ計算は自社で決めた端数処理(切捨てか四捨五入)で計算するので、仕入先が切捨てでも四捨五入で計上できます。ただし、1件ごとの差は1円未満なので、仕入の件数が少ない会社では差は数十円〜数百円です。
組み合わせの制限:売上を積上げにすると仕入は割戻しにできない
売上と仕入の計算方法は自由に組み合わせられるわけではありません。国税庁のQ&A(問118)は次のように書いています。
なお、売上税額を積上げ計算した場合、仕入税額も積上げ計算しなければなりません。— 国税庁 インボイスQ&A 問118(208ページ)
| 売上税額 | 請求書等積上げ | 帳簿積上げ | 割戻し |
|---|---|---|---|
| 割戻し計算(すべての取引) | ○ | ○ | ○ |
| 積上げ計算(すべて、または一部の取引) | ○ | ○ | × |
この制限は施行令46条3項の書き方からきています。仕入の割戻し計算は、「課税標準額に対する消費税額の計算につき、同条第五項の規定の適用を受けない事業者」(売上で積上げ計算を使わない事業者)が使える方法として定められています。
売上の積上げ計算は、売上税額を少なくできる一方で、仕入の割戻し計算を使えなくなります。計算例1・2の店で比べると次のとおりです(国税の差引税額)。
| 売上税額 | 仕入税額 | 売上税額 | 仕入税額 | 差引(国税) |
|---|---|---|---|---|
| 割戻し | 割戻し | 709,020 | 709,090 | −70 |
| 割戻し | 帳簿積上げ(四捨五入) | 709,020 | 709,800 | −780 |
| 積上げ(切捨て) | 請求書等積上げ(仕入先も切捨て) | 702,000 | 702,000 | 0 |
| 積上げ(切捨て) | 帳簿積上げ(四捨五入) | 702,000 | 709,800 | −7,800 |
| 積上げ(切捨て) | 割戻し | この組み合わせは選べない | ||
単純化した例です(売上と仕入が同額のため差引はマイナス=還付)。実際には、売上の件数と仕入の件数、自社のレシート・請求書の端数処理、仕入先の端数処理で結果が変わります。選ぶ前に、1年分の帳簿で両方を試算して比べるのが確実です。
併用:売上は取引先・事業ごとに分けられる、仕入は割戻しと混ぜられない
売上:割戻しと積上げの併用はできる
売上税額は、取引先ごと・事業ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて使えます(基本通達15-2-1の2)。たとえば、請求書で取引する卸売部門は積上げ計算、税率だけを書いたレシートを出す小売部門は割戻し計算、という組み合わせです。
なお、売上税額の計算は、取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて適用するなど、併用することも認められますが、併用した場合であっても売上税額の計算につき積上げ計算を適用した場合に当たるため、仕入税額の計算方法に割戻し計算を適用することはできません(基通15-2-1の2)。— 国税庁 インボイスQ&A 問119
Q&A 問125は、期末をまたぐ請求書について期間で分ける例も示しています。3月決算・20日締めの会社が期末をまたぐ請求書(3月21日〜4月20日分)を交付した場合について、3月21日〜31日と4月1日〜20日の取引は割戻し計算、それ以外の期間(4月21日〜翌年3月20日)は積上げ計算とすることも可能としています。前に書いたとおり、決算締切日を3月20日とし消費税も同じ締切日で処理している会社は、この区分は不要です。
卸売の税込売上 33,000,000円(交付した請求書の消費税額等の合計 3,000,000円)、小売の税込売上 11,000,000円(レシートは適用税率だけを記載)。
一部でも積上げ計算を使っているので、仕入税額は請求書等積上げ計算か帳簿積上げ計算で計算します。併用した場合の付表・申告書の記載は、国税庁「インボイス制度に対応した設例別の消費税申告書の計算・記載方法」の設例4(併用時の計算)で示されています(2023年10月1日をまたぐ課税期間の設例です)。
仕入:請求書等積上げと帳簿積上げは併用できる
基本通達11-1-9は、請求書等積上げ方式又は帳簿積上げ方式と総額割戻し方式との併用はできないとしたうえで、「(注)請求書等積上げ方式と帳簿積上げ方式との併用は可能である」としています。インボイスに税額が書いてある仕入は請求書等積上げ、会計ソフトで請求書単位に仮払消費税額等を計上している仕入は帳簿積上げ、という組み合わせは認められます。一方、一部の仕入だけを割戻し計算にすることはできません。
申告書の書き方(第一表・付表1-3)
国税庁の「消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方」(令和7年11月)は、売上税額・仕入税額に積上げ計算を適用した場合の記載を設例(27〜29ページ)で示しています。設例の数字で流れを確かめます。
積上げ計算では、課税標準額 × 7.8% ではなく、インボイスの消費税額等の合計 × 78/100 が消費税額②になります。課税標準額①は、税込の売上から積み上げた消費税額等を差し引いて求めます。この設例は売上・仕入とも積上げ計算だけの例です。割戻し計算と併用する場合は、上の設例別の計算・記載方法(設例4)で記載を確かめてください。
第一表の参考事項は、様式の時期で違います。
| 課税期間 | 第一表の参考事項 |
|---|---|
| 2026年9月30日以前に開始した課税期間 | 「課税標準額に対する消費税額の計算の特例の適用」欄は、書き方(令和7年11月)で「使用しないでください」とされている |
| 2026年10月1日以後に開始する課税期間 | 国税庁が掲載している新しい様式では、同じ位置の欄が「売上税額の積上げ計算の適用」(適用あり・適用なし)になっている |
3月決算の法人なら、2027年4月1日に始まる課税期間から新しい様式です。新しい様式に対応した「書き方」は、2026年10月31日時点では国税庁のサイトで確認できませんでした。記載のしかたは、改訂版の書き方が公表されたら確かめてください。
どちらを選ぶか:差が出る仕組みと確認の手順
積上げ計算と割戻し計算の差は、インボイス1枚ごと・帳簿の計上1件ごとの1円未満の端数処理から生まれます。割戻し計算は合計してから1回だけ端数を処理するので、端数処理の向きに左右されません。
| 場面 | 差の向き |
|---|---|
| 自社のレシート・請求書の端数を切り捨てている | 売上の積上げ計算で売上税額が少なくなる(件数が多いほど差が大きい) |
| 自社のレシート・請求書の端数を四捨五入・切上げにしている | 売上の積上げ計算で少なくなるとは限らない。切上げなら多くなる |
| 仕入先が端数を切り捨てている | 請求書等積上げ計算の仕入税額が割戻し計算より少なくなる。帳簿積上げ(四捨五入)や割戻し計算で取り戻せる場合がある |
| 税率だけを書いたレシートが多い | その売上は積上げ計算に使えない(割戻し計算との併用で対応) |
確認の手順は次のとおりです。
- 自社のインボイスの端数処理を確かめる: レジ・請求書発行ソフトの設定(切捨て・四捨五入・切上げ)と、レシートに税額を書いているか
- 交付したインボイスの写しが揃うか: レジのジャーナル、請求書の控えのデータ。期末をまたぐ請求書の扱い(決算締切日を期末より前にしているか)も確かめる
- 仕入の計算方法を会計ソフトの設定と合わせる: 仕訳ごと・請求書ごとに仮払消費税額等を計上しているなら帳簿積上げ、インボイスの税額を入力しているなら請求書等積上げ
- 1年分で試算する: 売上・仕入それぞれの方法で計算し、選べる組み合わせの中で比べる。一般課税と簡易課税・2割特例・3割特例の比較は 消費税の納付税額の比較ツールでできます
計算方法の選択に届出はありません。申告のときにどの方法で計算したかを、帳簿・インボイスの写しで説明できるようにしておきます。
実務で間違えやすい点
- 売上の一部だけ積上げにしたのに、仕入を割戻し計算にする: 取引先ごと・期間ごとに併用した場合も「積上げ計算を適用した場合」に当たります(基本通達15-2-1の2(注)2)。仕入は請求書等積上げか帳簿積上げです
- 税率だけを書いたレシートの売上を積上げ計算に入れる: 消費税額等の記載がないので使えません。その売上は割戻し計算で計算します
- 期末をまたぐ月締め請求書の税額で積上げ計算をする: 翌期分の税額が含まれているため、そのままでは使えません。期末・期首の請求書の期間だけ割戻し計算にする方法があります(Q&A 問125)。仕入側は、当期の課税仕入れについて帳簿積上げ計算ができます(Q&A 問129)。決算締切日(法人税基本通達2-6-1)により法人税・消費税を申告している場合は、課税期間ごとの区分は不要です(問125・問129の(注))
- 仕入の一部だけを割戻し計算にする: 積上げ計算(請求書等・帳簿)と割戻し計算の併用はできません(基本通達11-1-9)
- 帳簿積上げ計算で端数を切り上げる: 切捨てか四捨五入に限られます(施行令46条2項)。会計ソフトの端数設定が「切上げ」になっていないか確かめます
- インボイスの消費税額等を品目ごとに端数処理して合計する: 1枚につき税率ごとに1回の端数処理です(Q&A 問57)。積上げ計算はこの税額を合計するので、発行側の書き方が誤っていると積上げの前提が崩れます。請求書の作り方は 請求書の作成ツールで確かめられます
- 経過措置の仕入だけ別の方法で計算する: 免税事業者などからの仕入(2026年9月30日までの取引は80%、10月1日以後の取引は70%控除。同じ課税期間に両方があれば取引日で分けて集計)も、仕入税額を積上げ計算しているなら積上げ計算です。課税仕入れのつど 支払対価 × 7.8/110(6.24/108)× 控除割合 を計算し、1円未満は切捨て又は四捨五入します。区分して管理し、期中や期末にまとめて計算してもよいとされています(申告書(一般用)の書き方 3〜4ページ)。計算は 経過措置の計算ツールと インボイス経過措置70%の仕訳例で解説しています
飲食料品の税率を2027年4月1日から2年間引き下げる改正案(2026年9月15日閣議決定の大綱)について、国税庁が特設サイトで資料を掲載しています(法案が成立した場合の内容。2026年10月31日時点)。この記事の軽減税率(8%・6.24%・100/108)の算式は、それまでの取引を前提にしています。
次に読む記事は、インボイス制度の実務(記載事項・少額特例・経過措置)です。消費税の税額計算で使う端数の決まりは 税金・社会保険料の端数処理の早見表にまとめています。
この記事の計算ができる無料ツール
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ISZ™ 仕訳AI は、証憑から読み取った消費税額と税区分を仕訳の下書きにし、1年分の帳簿から消費税申告書を作成します。
- 売上税額は割戻し計算・積上げ計算、仕入税額は積上げ計算・割戻し計算を選択
- 仕入の積上げ計算は、証憑に記載された税額(請求書等積上げ)と、それ以外の取引の帳簿積上げを区分して合計
- 売上を積上げ計算にした場合は、仕入税額を積上げ計算で計算し、その旨を画面に表示
- e-Tax 用データ(.xtx)の出力
どの計算方法を選ぶかは、税理士・経理担当者が判断して確定します。会計・申告・帳簿の機能は無料(期限なし)。AIの機能には有効なAI枠が必要で、登録でAI枠100枚つき(1か月有効)・クレジットカード不要。
よくある質問
消費税の積上げ計算と割戻し計算の違いは何ですか?
割戻し計算は、税込の売上や仕入の合計から税額を計算する方法です(売上は × 100/110 で課税標準額を出して × 7.8%、仕入は × 7.8/110)。積上げ計算は、売上では交付したインボイスに記載した消費税額等、仕入では受け取ったインボイスに記載された消費税額等や帳簿に計上した仮払消費税額等を合計して × 78/100 する方法です。売上は割戻し計算、仕入は請求書等積上げ計算が原則です。
売上を積上げ計算にした場合、仕入を割戻し計算にできますか?
できません。仕入の割戻し計算は、売上税額を割戻し計算している場合に限られます(消費税法施行令46条3項、インボイスQ&A 問118)。取引先ごとに一部の売上だけを積上げ計算にした場合も同じです(消費税法基本通達15-2-1の2(注)2)。
売上税額の割戻し計算と積上げ計算を併用できますか?
できます。取引先ごと・事業ごとに分けることも、期末・期首をまたぐ請求書の期間だけ割戻し計算にすることも認められています(基本通達15-2-1の2、インボイスQ&A 問125)。併用した場合、仕入税額は積上げ計算になります。
レシートに税率だけを書いている場合、売上の積上げ計算はできますか?
その売上についてはできません。適格簡易請求書は適用税率か税率ごとの消費税額等のどちらかを書けばよい書類ですが、積上げ計算には記載した消費税額等が必要です(インボイスQ&A 問119)。その部分は割戻し計算で計算します。
帳簿積上げ計算の「課税仕入れの都度」は、月まとめの請求書単位でもよいですか?
よいとされています。基本通達11-1-10とインボイスQ&A 問126(注1)は、一定期間の課税仕入れをまとめて受け取った請求書を単位として帳簿に記載する場合も含むとしています。納品書や買手の支払基準など合理的な単位で継続して計上することも差し支えないとされています。
帳簿積上げ計算の端数処理は切上げでもよいですか?
できません。課税仕入れのつど計算した額の1円未満は、切捨て又は四捨五入です(消費税法施行令46条2項)。インボイスを発行する側の端数処理(切上げ・切捨て・四捨五入など任意)とは扱いが違います。
積上げ計算と割戻し計算を選ぶのに届出は必要ですか?
届出の手続はありません。2026年10月1日以後に開始する課税期間の申告書第一表には、参考事項として「売上税額の積上げ計算の適用」の欄があります。どの方法で計算したかを帳簿とインボイスの写しで説明できるようにしておきます。
出典
- e-Gov 法令検索 消費税法施行令(46条・62条・70条の10)
- e-Gov 法令検索 消費税法(45条5項)
- 国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年5月改訂。問57・問118〜問129)
- 国税庁 適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-(令和8年5月)
- 国税庁 消費税法基本通達 15-2-1の2(課税標準額に対する消費税額の計算)
- 国税庁 消費税法基本通達 11-1-9・11-1-10(仕入税額の計算方法)
- 国税庁 タックスアンサー No.6351 納付税額の計算のしかた
- 国税庁 タックスアンサー No.6383 課税標準額に対する消費税額の計算
- 国税庁 タックスアンサー No.6371 端数計算
- 国税庁 法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方(令和7年11月)
- 国税庁 インボイス制度に対応した設例別の消費税申告書の計算・記載方法(設例の一覧)
- 国税庁 消費税率引下げ特設サイト(飲食料品に係る2年間の消費税率引下げ)
- 国税庁 消費税及び地方消費税の申告書の様式(令和8年10月1日以後に開始する課税期間用を含む)
更新履歴
- 2026/10/31: 公開
この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。