この記事は、2026年11月4日時点の消費税法・同施行令・消費税法基本通達と国税庁のタックスアンサー(No.6501・6502・6503・6531・6629)をもとに、事業者が消費税の課税事業者になるか免税事業者になるかの判定を、計算例と届出書の期限まで含めて整理したものです。個人事業者と12月決算の法人は、いまの時期に令和9年分(2027年の課税期間)の判定をする材料がそろいます。基準期間は令和7年、特定期間は令和8年1月〜6月だからです。課税事業者になった後の計算方法の選び方は消費税の計算方法の比較、2割特例の終了後の選択は2割特例の終了後の選び方で説明しています。
判定の全体像:どの順に何を見るか
消費税法9条1項は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者の納税義務を免除しています。国税庁 No.6501 は原則を次のように説明しています。
その課税期間の基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます。— 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」
ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免除されない場合がいくつもあります。実務では、次の表を上から順に確かめると漏れが少なくなります。
| 確かめること | 当てはまれば | 根拠 |
|---|---|---|
| インボイス発行事業者の登録をしているか | 登録日の属する課税期間以後は免除されない | 消費税法9条1項かっこ書、基本通達1-4-1の2 |
| 課税事業者選択届出書を出しているか | 届出の効力がある課税期間は免除されない | 同法9条4項 |
| 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるか | 課税事業者 | 同法9条1項・2項 |
| 特定期間の課税売上高と給与等の支払額が、どちらも1,000万円を超えるか | 課税事業者(どちらかが1,000万円以下なら、その基準で判定して免税にできる) | 同法9条の2 |
| 基準期間がない法人で、期首の資本金が1,000万円以上か・特定新規設立法人か | 課税事業者 | 同法12条の2・12条の3 |
| 相続・合併・分割で事業を承継したか | 被相続人・被合併法人などの課税売上高で判定 | 同法10条〜12条 |
| 一般課税の課税期間に調整対象固定資産・高額特定資産・金地金などを取得したか | 一定の期間は免除されない | 同法9条7項・12条の2第2項・12条の4 |
判定は課税期間ごとに行います。今年が免税事業者でも、来年・再来年の判定は改めて必要です。最近の改正と、改正案の段階のものは次のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜 | インボイス発行事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免税事業者にならない |
| 2024年10月1日以後に開始する課税期間 | 国外事業者(非居住者である個人事業者・外国法人)は、特定期間の判定に給与等の支払額を使えない。特定新規設立法人の判定に、判定対象者の収益の合計額50億円超が加わった |
| 2027年4月1日の属する課税期間(改正案) | 飲食料品の税率引下げ(2027年4月〜2029年3月)に合わせ、飲食料品の譲渡を行う免税事業者が、2027年4月1日の属する課税期間中に課税事業者選択届出書を出せば、その課税期間から課税事業者になれる特例が案内されている(国税庁 Q&A 問3-2)。国税庁の特設サイトの資料は、法案が成立した場合の内容としている |
基準期間の課税売上高の計算
基準期間は、個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度の前々事業年度です(消費税法2条1項14号)。前々事業年度が1年未満の法人は、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間になります。
基本通達1-4-2は、輸出免税などで消費税が免除される売上を含め、消費税額等と売上返還等の額は含まないとしています。非課税売上(土地の譲渡、住宅の貸付けなど)と不課税の収入は入りません。貸倒れになった売上は差し引きません(同通達(注)2)。
基準期間に免税事業者だった場合は税込のまま
基準期間に免税事業者だった事業者は、その期間の売上に消費税が課されていません。基本通達1-4-5は次のように定めています。
免税事業者であった基準期間である課税期間中に当該事業者が国内において行った課税資産の譲渡等に伴って収受し、又は収受すべき金銭等の全額が当該事業者のその基準期間における課税売上高となる— 国税庁 消費税法基本通達1-4-5
令和7年は免税事業者で、課税売上は税込で受け取った額の合計が 10,450,000円(輸出・非課税の売上はなし)でした。
令和7年は免税事業者なので、税抜にしません。基準期間の課税売上高は 10,450,000円で、1,000万円を超えるため、令和9年分は課税事業者です。
10,450,000 × 100/110 = 9,500,000円として「1,000万円以下」と判定するのは誤りです。
基準期間が1年でない法人の年換算
法人は、基準期間が1年でなければ、基準期間の課税売上高を基準期間に含まれる事業年度の月数の合計で割り、12を掛けます(消費税法9条2項2号)。月数は暦に従って数え、1か月未満の端数は1か月にします(同条3項)。個人事業者は、年の途中で開業して基準期間に事業をしていた期間が1年に満たなくても、年換算しません(基本通達1-4-9)。
2025年10月15日設立、3月決算、資本金300万円。1期目(2025年10月15日〜2026年3月31日)は免税事業者で、課税売上は税込 6,000,000円でした。
3期目(2027年4月1日〜2028年3月31日)の基準期間は、2025年3月31日から2026年3月31日までの間に開始した事業年度、つまり1期目です。1期目の月数は、10月15日〜3月14日の5か月と残り17日(端数を1か月)で6か月です。
6,000,000 ÷ 6 × 12 = 12,000,000円(1期目は免税事業者だったので税込のまま)。1,000万円を超えるので、3期目は課税事業者です。年換算をせず「600万円だから免税」とすると誤ります。
特定期間の判定と給与等の支払額
基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務は免除されません(消費税法9条の2第1項)。特定期間は次のとおりです(同条4項)。
| 事業者 | 特定期間 |
|---|---|
| 個人事業者 | その年の前年1月1日〜6月30日 |
| 前事業年度が短期事業年度でない法人 | 前事業年度開始の日以後6か月の期間 |
| 前事業年度が短期事業年度の法人 | 前々事業年度開始の日以後6か月の期間(前々事業年度が基準期間に含まれるときなどは除く)。前々事業年度もなければ特定期間はない |
短期事業年度は、前事業年度が7か月以下のもの、または前事業年度開始の日以後6か月の期間の末日の翌日から前事業年度の終了の日までが2か月未満のものです(消費税法施行令20条の5第1項)。また、6か月の期間の末日が月末でなく、前事業年度の終了の日が月末であれば、6か月の期間の末日の属する月の前月の末日までを6か月の期間とみなします(同令20条の6第1項1号)。
給与等の支払額で判定できる
特定期間の判定は、課税売上高の代わりに給与等の支払額の合計額で行うこともできます(消費税法9条の2第3項)。国税庁 No.6501 は「いずれの基準で判定するかは納税者の任意です」としています。課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等の支払額が1,000万円以下なら、給与等の支払額で判定して免税事業者になれます。基本通達1-5-23は、ここでいう給与等の範囲を次のように示しています。
当該給与等の金額とは、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しないことに留意する。— 国税庁 消費税法基本通達1-5-23(同(注)1「特定期間中において支払った給与等の金額には、未払額は含まれない」)
役員報酬も給与等に入ります。退職手当は含みません(所得税法施行規則100条1項1号の給与等)。国外事業者は、2024年10月1日以後に開始する課税期間から、この給与等の支払額による判定を使えません。
2025年4月1日設立、3月決算、資本金300万円。2期目(2026年4月1日〜2027年3月31日)の特定期間は、1期目開始の日以後6か月の 2025年4月1日〜9月30日です。1期目は7か月を超え、10月1日〜3月31日も2か月以上あるので短期事業年度ではありません。
この期間の課税売上高は 13,000,000円、期間中に支払った給与等は役員報酬 4,200,000円・従業員給与 3,600,000円(このほか通勤手当 180,000円)でした。9月分の給与のうち 300,000円は10月に支払っています。
給与等の支払額 = 4,200,000 + 3,600,000 = 7,800,000円(通勤手当と未払分は含めない)。1,000万円以下なので、給与等で判定すれば2期目は免税事業者です(インボイス登録をしていない場合)。課税売上高だけで判定すると課税事業者になります。
(1) 2025年10月15日設立・3月決算・資本金300万円(計算例2の会社)。1期目は5か月半で7か月以下の短期事業年度です。2期目から見て前々事業年度もないので、2期目には特定期間がありません。基準期間もないので、新設法人・特定新規設立法人に当たらなければ2期目も免税事業者です。3期目は計算例2のとおり基準期間で課税事業者になります。
(2) 2025年4月15日設立・3月決算。1期目開始の日以後6か月の期間は4月15日〜10月14日で、末日が月末ではなく、1期目の終了の日(3月31日)は月末です。このため6か月の期間は前月末までとなり、2期目の特定期間は 2025年4月15日〜9月30日です。この期間の課税売上高・給与等の支払額で判定します。
個人事業者は、前年の途中で開業していても特定期間は前年1月1日〜6月30日で、6か月分に換算しません。国税庁 No.6531 は、前年3月1日に開業した個人事業者の例で「前年の3月1日から6月30日までの期間における課税売上高……となり、6か月分に換算する必要はありません」と説明しています。
新設法人・特定新規設立法人
設立1期目・2期目は基準期間がないので原則は免税ですが、その事業年度開始の日の資本金(出資金)が1,000万円以上の法人(新設法人)は納税義務が免除されません(消費税法12条の2第1項)。判定は各事業年度の期首の資本金で行うので、1期目の途中の増資は2期目に効きます。
資本金の額を1,000万円未満で設立した後、設立1期目の途中で増資したことにより資本金の額が1,000万円以上となった場合には、設立2期目は課税事業者となります。— 国税庁 タックスアンサー No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」
資本金1,000万円未満でも、その事業年度開始の日に他の者に株式等の50%超を直接・間接に持たれ、その者や特殊な関係にある法人の基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円を超える場合(2024年10月1日以後に開始する課税期間からは、収益の合計額が50億円を超える場合も)は、特定新規設立法人として免除されません(同法12条の3)。売上規模の大きい会社の子会社や、事業規模の大きい個人が株式の過半を持つ法人で問題になります。
| 設立の例(3月決算・インボイス登録なし) | 1期目 | 2期目 | 3期目 |
|---|---|---|---|
| 資本金1,000万円で設立 | 課税(新設法人) | 課税(新設法人) | 基準期間(1期目)・特定期間で判定 |
| 資本金300万円・1期目12か月 | 免税 | 特定期間(1期目の最初の6か月)で判定 | 基準期間(1期目)・特定期間で判定 |
| 資本金300万円・1期目7か月以下 | 免税 | 特定期間なし → 免税 | 基準期間(1期目・年換算)・特定期間で判定 |
| 資本金300万円で設立し、1期目に1,000万円へ増資 | 免税 | 課税(期首資本金1,000万円以上) | 基準期間(1期目)・特定期間で判定 |
表の「免税」は、特定新規設立法人に当たらず、課税事業者を選択していない場合です。資本金1,000万円未満で法人を作ると設立から2年間は免税になる、という説明をよく見かけますが、1期目の長さと特定期間の売上・給与で2期目は変わります。法人成りを比べるときは法人成りの手取りシミュレーターの注意書きもあわせて確かめてください。
新設法人が調整対象固定資産を取得したとき
新設法人・特定新規設立法人が、基準期間がない課税期間中に調整対象固定資産(建物・機械・車両・備品などで1単位の税抜価額100万円以上)を取得し、その課税期間を一般課税で申告すると、取得した課税期間から、その課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までは免税事業者になれません(同法12条の2第2項、No.6503)。この間は簡易課税制度選択届出書も出せません。
2025年4月1日設立。2期目(2026年4月1日〜2027年3月31日)に税抜3,000,000円の機械を取得し、2期目を一般課税で申告しました。
2期目の初日以後3年を経過する日は2029年3月31日で、それを含む4期目(2028年4月1日〜2029年3月31日)までは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者です。
課税事業者を選ぶ場合と、免税に戻れない期間
免税事業者でも、課税事業者選択届出書を出せば課税事業者になれます。設備投資や輸出で仕入の税額が売上の税額を上回り、還付を受けたいときに使います。効力が生じるのは、原則として提出した日の属する課税期間の翌課税期間からで、事業を開始した日の属する課税期間などは、その課税期間から選べます(消費税法9条4項)。国税庁 No.6501 は期限について次のように注意しています。
当課税期間の末日が、土曜日、日曜日および国民の祝日等にあたる場合でも、翌課税期間から課税事業者を選択したい場合には当課税期間中に消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります(翌日等の平日に提出期限は延長されません。)。— 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」
選択をやめる届出(選択不適用届出書)は、事業を廃止した場合を除き、選択の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません(同条6項)。その2年の間に開始した課税期間に調整対象固定資産を取得して一般課税で申告すると、取得した課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、選択不適用届出書を出せません(同条7項)。
課税事業者が、簡易課税・2割特例の適用を受けない課税期間に高額特定資産(1単位の税抜価額1,000万円以上の棚卸資産・調整対象固定資産)を取得した場合も、取得した課税期間の翌課税期間から、その課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までは、免税事業者になれません(同法12条の4、No.6502)。自ら建設した資産は、簡易課税・2割特例・3割特例の適用を受けない課税期間の建設等の費用の累計が1,000万円以上になった課税期間の翌課税期間から、完成した課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までです。金・白金の地金等の仕入れ等の合計額が1課税期間で税抜200万円以上になった場合も同じ制限があります。高額特定資産を取得した場合は、取得した課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までは、簡易課税制度選択届出書も出せません。自ら建設した資産・金地金の場合にも同様の制限があり、期間の数え方は No.6502 のとおりです。
2026年(1月〜12月)を一般課税で申告する課税事業者が、2026年6月に店舗の建物を税抜12,000,000円で取得しました。
2026年の初日以後3年を経過する日は2028年12月31日です。2027年・2028年の課税期間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者です。国税庁 No.6502 も「原則として、その後の2年間は……免税事業者とはならず」と説明しています。
インボイス発行事業者の登録をやめて免税事業者に戻る手続と、登録に係る経過措置で途中から登録した事業者の2年の制限は、免税事業者に戻るという選択と2年の制限で扱っています。
届出書と期限(12月決算・個人は令和9年分の判定)
判定の結果が変わったときは、届出書を所轄の税務署に出します。期限は国税庁 No.6629 の一覧で次のとおりです。
| 届出書 | 出すとき | 期限 |
|---|---|---|
| 消費税課税事業者届出書(基準期間用) | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた | 速やかに |
| 消費税課税事業者届出書(特定期間用) | 特定期間の課税売上高(給与等で判定したときは給与等の支払額も)が1,000万円を超えた | 速やかに |
| 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下になった(インボイス登録中は対象外) | 速やかに |
| 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 基準期間がない事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上 | 速やかに(法人設立届出書に新設法人に該当する旨などを書けば提出したものとして扱う) |
| 消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出書 | 特定新規設立法人に該当した | 速やかに(法人設立届出書での代用はない) |
| 消費税課税事業者選択届出書 | 課税事業者を選びたい | 適用を受けたい課税期間の前の課税期間の末日まで(休日でも延びない。郵便・信書便で出したときは通信日付印の日に提出したものとみなす) |
この時期に判定するのは、次の事業者です。
- 個人事業者: 令和9年分は、令和7年の課税売上高と令和8年1月〜6月の課税売上高・給与等の支払額で判定します。令和9年分から課税事業者を選ぶ場合の選択届出書の期限は2026年12月31日(木)で、休日でも延びません(e-Taxでも出せます。郵便なら通信日付印の日が提出日です)。飲食料品の譲渡を行う免税事業者は、改正案が成立すれば2027年中に出しても2027年分から課税事業者になれる特例が案内されていますが(上の表)、成立前のこの時点では、通常の期限で準備しておくのが確実です
- 12月決算の法人: 2027年12月期は、2025年12月期を基準期間、2026年1月〜6月を特定期間として判定します。選択届出書の期限は同じく2026年12月31日です
- 3月決算の法人: 2027年3月期の判定はすでに決まっています。2028年3月期の基準期間は2026年3月期、特定期間は2026年4月〜9月で、9月までの帳簿が締まれば判定できます
判定で課税事業者になると、計算方法(一般課税・簡易課税)を決め、簡易課税なら届出書を期限までに出します。期限の一覧は申告・納付期限の一覧、課税方式ごとの税額の比較は消費税の計算方法比較ツールで確かめられます。課税事業者になって2年目以降は、前期の確定消費税額によって消費税の中間申告も必要になります。
実務で間違えやすい点
- 免税だった基準期間を税抜にする: 基準期間に免税事業者だったときは、税込の売上がそのまま課税売上高です(計算例1)。1,000万円の前後にいる事業者で判定が変わります
- 法人の基準期間を年換算しない: 設立1期目が短いと、3期目の判定で年換算が必要です。月数は1か月未満の端数を1か月として数えます(計算例2)。一方、個人事業者は年換算しません
- 特定期間を課税売上高だけで判定する: 給与等の支払額が1,000万円以下なら、それで判定して免税にできます。給与等は所得税の課税対象の給与・賞与で、通勤手当・旅費と未払分は入りません(計算例3)
- 短期事業年度と6か月の末日の調整を見落とす: 1期目が7か月以下(7か月を超えても、6か月の期間の末日の翌日から期末までが2か月未満なら同じ)なら、2期目に特定期間はありません。月の途中で設立した法人は、6か月の期間の末日を前月末に直します(計算例4)
- 期首資本金の基準を設立時だけで見る: 1期目の途中の増資で資本金が1,000万円以上になると、2期目は新設法人として課税事業者です
- 3年の制限を忘れて簡易課税・免税を前提にする: 新設法人・選択届出の期間中の調整対象固定資産や、高額特定資産を一般課税の期に取得すると、免税に戻れない期間ができます。設備投資の前に、どの課税期間まで続くかを計算しておきます(計算例5・6)
- 課税事業者・免税事業者の切替えで棚卸資産の調整を忘れる: 免税事業者が課税事業者になるときは、免税だった期間に仕入れて前日に持っている棚卸資産の消費税額を、課税事業者になった課税期間の仕入税額に含められます(消費税法36条1項。明細の保存が条件)。逆に免税事業者に戻る直前の課税期間に仕入れて期末に持っている棚卸資産の税額は、仕入税額から除きます(同条5項)
- インボイス登録中に「納税義務者でなくなった旨の届出書」を出そうとする: 登録している間は基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者で、この届出書の対象になりません。免税に戻るには登録取消届出書が必要です
決算期を変えた法人、決算日が月末でない法人(6か月の期間の末日の調整は消費税法施行令20条の6第1項2号)、合併・分割をした法人、相続で事業を承継した個人は、この記事の例と基準期間・特定期間の取り方が違います。条文(消費税法10条〜12条)と国税庁 No.6531 で個別に確かめてください。
次に読む記事は、課税事業者になった後の方式選びを扱う 2割特例の終了後の選び方と、2年目からの 消費税の中間申告の回数・期限です。インボイスの登録と免税事業者からの仕入の扱いは インボイス制度の実務にまとめています。
この記事の計算ができる無料ツール
ISZ™ 仕訳AI では
ISZ™ 仕訳AI は、証憑の読み取りから作った帳簿をもとに、次の課税期間の納税義務の判定に使う数字を申告・納付の画面に出します。
- 基準期間(前々事業年度)の課税売上高を帳簿から集計し、1年でなければ月数で年換算
- 特定期間の課税売上高と、給与計算・帳簿の給与の科目からの給与等の支払額を並べて、判定の理由と出どころを表示
- 期首資本金が1,000万円以上かの表示と、特定新規設立法人に当たるかの確認の質問
決算期の変更・合併・分割・相続がある場合の判定と、届出書の作成は対象外です。課税事業者かどうかの最終的な判断は、税理士・経理担当者が確認して行います。会計・申告・帳簿の機能は無料(期限なし)。AIの機能には有効なAI枠が必要で、登録でAI枠100枚つき(1か月有効)・クレジットカード不要。
よくある質問
消費税の基準期間とはいつのことですか?
個人事業者はその年の前々年、法人は原則としてその事業年度の前々事業年度です。前々事業年度が1年未満の法人は、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間になります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます。
基準期間に免税事業者だった場合、課税売上高は税抜にしますか?
税抜にしません。免税事業者だった期間の売上には消費税が課されていないため、受け取った金額の全額が基準期間の課税売上高になります(消費税法基本通達1-4-5)。税込 1,045万円なら 1,000万円を超えるので課税事業者です。
特定期間の判定は給与で行ってもよいですか?
できます。特定期間の課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の合計額で判定でき、どちらで判定するかは事業者が選べます。給与等は所得税の課税対象の給与・賞与で、通勤手当・旅費などの非課税分と未払額は含めません。国外事業者は2024年10月1日以後に開始する課税期間から給与等で判定できません。
資本金1,000万円未満で設立すれば2年間は必ず免税ですか?
そうとは限りません。1期目が短期事業年度(7か月以下など)でなければ2期目に特定期間があり、その課税売上高と給与等の支払額がどちらも1,000万円を超えれば2期目は課税事業者です。1期目の途中の増資で期首資本金が1,000万円以上になった場合、特定新規設立法人に当たる場合、インボイス登録や課税事業者の選択をした場合も免税になりません。
基準期間が6か月の法人はどう判定しますか?
基準期間の課税売上高を基準期間の月数で割り、12を掛けた金額で判定します。月数は暦に従って数え、1か月未満の端数は1か月にします。課税売上 600万円・6か月なら 1,200万円で、1,000万円を超えるので課税事業者です。個人事業者は年換算しません。
1,000万円以上の設備を買うと免税に戻れなくなりますか?
簡易課税・2割特例の適用を受けない課税期間に税抜1,000万円以上の棚卸資産・調整対象固定資産(高額特定資産)を取得すると、取得した課税期間の翌課税期間から、その課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者です。新設法人は税抜100万円以上の調整対象固定資産で同様の制限があります。
課税事業者選択届出書の期限が土日の場合は延びますか?
延びません。翌課税期間から課税事業者になるには、その前の課税期間中に提出する必要があり、課税期間の末日が休日でも翌日の平日に延長されません。個人事業者や12月決算の法人が2027年分から選ぶ場合は、2026年12月31日までに提出します。郵便・信書便で出した場合は、通信日付印の日に提出したものとみなされます。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.6502 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき
- 国税庁 タックスアンサー No.6629 消費税の各種届出書
- 国税庁 消費税法基本通達 第1章第4節 納税義務の免除(1-4-1の2・1-4-2・1-4-5・1-4-9)
- 国税庁 消費税法基本通達 第1章第5節 納税義務の免除の特例(1-5-23)
- 消費税法 第2条・第9条・第9条の2・第12条の2〜第12条の4・第57条(e-Gov 法令検索)
- 消費税法施行令 第20条の5・第20条の6(特定期間)(e-Gov 法令検索)
- 国税庁 消費税率引下げ特設サイト
- 国税庁 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(令和8年9月)問3-2
更新履歴
- 2026/11/04: 公開
この記事は公表された法令・通達・国税庁などの資料にもとづく一般的な解説で、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・料率は改定されることがあります。実際の申告・納付・給与計算では最新の資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。